今日は水道橋宝生能楽堂にて「宝生会定期公演」に出演してまいりました。

私は能「杜若」の地謡を勤めました。

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杜若はもう何度も謡っているのですが、この曲には他の曲には無いある特異な点があると思います。”物着”の後に、

「3人がひとつの身体に同居している」

という時間帯があるのです。

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能には「物着」という演出がわりあい頻繁に出てきます。

舞台上で後見がシテの装束を着替えさせるのです。

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よくあるパターンは、「亡くなった人の形見を身につけて舞う」

というもので、杜若の物着もそれにあたります。

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しかし他の曲の物着で着るのは、

「1人の人間の形見」

です。

それが杜若に限っては、

「2人の人間の形見」を身につけるのです。

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つまり頭にかぶる冠は「在原業平」の形見、

羽織っている衣は「藤原高子」の形見、

そしてそれらを身につけるのは「杜若の精」。

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この姿を演じるシテは、「業平」「高子の妃」「杜若の精」という３つの”人格”を無理なく融合させて美しさを出さなければいけない訳で、非常に難しい役だと思います。

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私はまだこの「杜若」を舞ったことは無く、いつか舞ってみたい曲のひとつです。

舞う機会が来たら、この”三位一体”の姿を色々考えながら表現したいと思います。