奥が深い「幕上げ」
今日は名古屋能楽堂にて開催された「桃華能」に出演して参りました。
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楽屋に入ると、高校生の青年が1人楽屋見習いで働いています。
子方の頃からずっと知っている青年で、楽屋で”大人”として働いているのを見るのは感慨深いものがありました。
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周りの先輩達が、糸針の作り方、玉止めやズッコケ結びなどのやり方を教えてあげていて、青年は真剣な顔で聞いています。
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最初の能「右近」で、作り物の”花見車”の出し入れなどの幕上げを青年にもやってもらう事になりました。
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能舞台の幕には竹の長い棒が2本付いていて、2人で上げ下げすることになります。
一見単純なようで、実はかなり奥が深い難しい仕事がこの「幕上げ」なのです。
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見所から見える方の棒を先輩が持ち、見えない方を後輩が受け持ちます。
幕を上げた時の右手左手の位置や形まで厳密に決められていて、姿が悪いと後で先輩に怒られることになります。
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目を付ける場所も、先輩は横目でシテや作り物を追って幕の上げ下げのタイミングを測り、後輩は先輩の手元だけに視線を集中して、全く同じ動きをすることが求められるのです。
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青年は最初は棒を持つ両手の位置、肘の張り方、視線の位置などが違っていたので、
「こちらの手は棒の一番下を指を伸ばして持って、こちらの手はもっと肘を張って。視線は作り物を追わずに先輩の手元だけを見て」
といくつか注意すると、次からはとても良い幕上げになりました。
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しかし幕上げには多くのバリエーションがあり、例えば一度幕から出たシテが戻って来て再び出る場合や、幕に向かって走って来たシテが幕の直前の”三の松”で止まって拍子を踏む場合など、色々と間違えやすい”罠”もあります。
青年もこの先に無数の幕上げをして、時には失敗もしながら経験を積み上げていってくれる事でしょう。