巴塚を訪ねて

今週土曜日の「五雲能」にて、私は能「巴」のシテを勤めます。

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なので今日の午前中の隙間時間に滋賀県膳所にある「義仲寺」を訪ねてみました。

ここには木曽義仲のお墓と、巴御前の供養塔があるのです。

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JRに乗って雨模様の京都を出発。

大津のひとつ先の「膳所(ぜぜ)」で下車します。

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難読駅名のひとつ「膳所」。

昔琵琶湖の新鮮な魚を宮中に献上した場所で、それが名前の由来になったそうです。

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膳所駅から「ときめき坂」というやや照れ臭い名前の坂道を琵琶湖の方へ降りていきます。

10分ほどで旧東海道に行き当たり、左折してすぐに「義仲寺」はあります。

周りには、昔ここで激しい戦があったとは思えないような、平和な住宅街が広がっています。

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境内には義仲の大きなお墓があり、

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その横にひっそりと寄り添うように巴の供養塔「巴塚」がありました。

説明書きには、巴はこの場所で義仲の菩提を弔った後に木曽で90歳まで生きたとあります。

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しかし能「巴」では巴は若い姿で現れるのです。

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私は想像しました。

…巴は長生きして死んだ後も、義仲と一緒に戦いたかったのではなかろうか。

そして若い姿で修羅道に落ち、そこで再び義仲と出会って永遠に戦い続けている。

そういう幸せもあるのかもしれない…。

そう考えると、なんだか無性に切なくなってしまいました。

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義仲寺の入り口横には、「巴地蔵」という地蔵堂がありました。

その中にいらっしゃる「巴地蔵」はとても優しい顔をしています。

おそらく義仲と共にいる時の顔なのだろうな…と思いつつ、お参りして膳所駅への帰路につきました。

お正月気分かと言うと…

一昨日の元旦は宝生能楽堂にて謡初、昨日は三重の実家に日帰り帰省と、一見お正月らしい生活をしております。

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ところが実は心の中は全然お正月気分ではないのです。

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1月9日(日)の「月浪能特別公演」にて能「正尊」立衆。

1月15日(土)の「五雲能」にて能「巴」シテ。

と、正月早々に太刀や長刀を振り回す激しい役が続くのです。

なので正月行事と並行して毎日稽古も重ねております。

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能「巴」は14年前に大阪の「七宝会」で勤めさせていただきました。

二度目の演能でしかも前回から14年経っております。

今回はよりレベルアップした舞台になるように、頑張って稽古したいと思います。

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また明日からは3月5、6日の「澤風会郁雲会」に向けた舞囃子と能の稽古もスタートします。

明日だけでも舞囃子「山姥」「天鼓盤渉」「乱」「雲雀山」「三輪」、

能「井筒」「葵上」「夜討曽我」の稽古が予定されています。

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とりあえず3月の澤風会郁雲会までは「仕事全力モード」で進んで参ります。

卒寿祝いの「三笑」

今日は私の生まれ故郷の三重県久居に日帰りで行って参りました。

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ここが私の実家です。1939年築のまあまあ古い家で、今は父親が中をリフォームして暮らしています。

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ここ数年の帰省の時には、

父親と顔を合わせる→父親と墓参りに行く→そのまま少し散歩→日が暮れたら近所のハンバーグ専門店で一緒に晩御飯→東京に戻る

というコースがほぼ決まっています。

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でも今回は、ちょっと違う目的がありました。

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実は父親は昨年末の誕生日で卒寿を迎えて、12月25日に親類が集まって卒寿祝いの会を催したのです。

しかし私はその日は奈良と京都で舞台があり、お祝い会への出席が叶いませんでした。

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そこで父親には、「お正月に久居に帰った時に、卒寿祝いの謡をプレゼントするよ」

と伝えておいたのです。

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曲を何にしようかと考えて、「三笑」の

「菊の白露つもりつもって 不老不死の薬の泉よも盡きじ…」

という部分から最後までを謡うことにしました。

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リフォームしたリビングのフローリングの床に正座して、マスクに洋服というなんとも風情の無い有様でしたが、お祝いの心を込めて「三笑」を謡いました。

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父親は喜んでくれて、御礼という訳でもないのでしょうが、趣味で描いた絵をくれました。

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今日はまだハンバーグ屋さんが正月休みなので、2人で珈琲を淹れてゆっくり飲んで、それで帰ることにしました。

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帰り際に1人でお墓参りをした後に、やはり1人で少し散歩してみました。

久居は本当になんにも無い静かな町で、遠くに見える布引山も実に穏やかな姿です。

「子供の頃この辺で土筆採りをしたっけなあ…」

などとしみじみ思いながら、布引山に背を向けて久居駅へと帰路についたのでした。

2022年あけましておめでとうございます

皆様 2022年あけましておめでとうございます。

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昨年はコロナ禍が収まらない中でも3月に京都、10月に松本で澤風会を開催する事ができました。

学生の活動も全宝連は映像配信になりましたが、関宝連と関西宝連、そして京大の自演会は何とか有観客で開催されました。

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今年は先ず3月の5日(土)6日(日)に水道橋宝生能楽堂にて「東京澤風会・郁雲会大会」を開催いたします。

東京での澤風会は1年半ぶりで、能「井筒」、能「葵上」、能「夜討曽我」を始め舞囃子も多く出る予定です。

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そして9月24日(土)には京都大江能楽堂にて「澤風会京都大会」、10月には「松本澤風会大会」を開催予定です。

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私の演能予定としては、

①1月15日(土)五雲能にて能「巴」

於宝生能楽堂

②4月23日(土)七宝会にて能「羽衣盤渉」

於枚方市総合文化芸術センター

③5月27日夜能にて能「小鍛冶白頭」

於宝生能楽堂

の3番が予定されております。

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コロナの先行きはまだ不透明ですが、気をつけながら何とか頑張って稽古して参りたいと思います。

皆様本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。