3番の共通点は…

今日は水道橋宝生能楽堂にて「五雲能」に出演して参りました。

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昨年までの「五雲会」から名称を新しくしてのはじめての「五雲能」開催でした。

2度目の緊急事態宣言を受けて、再び客席数を半分に減らしての開催でしたが、沢山のお客様にいらしていただきました。

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今日の番組は能「竹生島」、「羽衣」、「国栖」の3番です。

楽屋入りして初番の「竹生島」の装束を見ると、興味深いことに気付きました。

後ツレ天女の長絹の色が”白”だったのです。

通常は”紫”の長絹です。

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そこで考えて、ハッと思いつきました。

能「羽衣」のシテも天女、そして能「国栖」の後ツレもまた天女なのです。

天女3番連続…。

これは長絹の色を3通りに変える方針なのだろうな…

と、思ったところで次の「羽衣」の装束が広げられて、またハッと驚きました。

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「長絹」ではなく「舞衣(まいぎぬ)」という装束だったのです。

色は紅。

能「羽衣」は宝生流では稀に「舞衣」で演じられますが、私が過去に見たことのあるのは白い舞衣のみで、”紅の舞衣”で演じられたのは初めてのことでした。

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そして留の能「国栖」の天女が見慣れた紫地長絹でした。

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長絹の色を変えて、また舞の笛も竹生島は「中之舞」、羽衣は「序之舞」、国栖は「下り羽」と異なる調子で、見所のお客様には同じ「天女」には見えなかったことと思われます。

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また全く異なる要素で、今日の能には3番ともに「漁師」が登場しました。

「竹生島」シテは琵琶湖の漁師。

「羽衣」ワキは三保の浦の漁師。

「国栖」シテは吉野川の漁師。

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偶然ながら”湖”、”海”、”川”の漁師が揃いました。

こちらもそれぞれ異なる装束、異なる位取りで、気付かなければ同じ「漁師」とは思われないでしょう。

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このように、その日の舞台の「隠しテーマ」を見つけて、その装束や囃子の変化は実は色々考えて配分されたものだと気がつく事も、能のひとつの楽しみ方だと思います。

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