悔しさを力に変えて
今日は朝から水道橋宝生能楽堂に行き、「葵上」の稽古をしました。
その後に日曜日開催の「月並能」の申合にて、能「自然居士」の地謡を謡いました。
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宝生能楽堂の楽屋食堂のテレビでは、台風19号の恐ろしいニュースがずっと流れています。
実は私の仲間が主催して明日名古屋で開催予定だった舞台が、台風の影響で延期になってしまいました。
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昨年から計画されていた個人演能会で、彼は番組の企画、楽師の依頼から、宣伝とチケット販売、そして勿論舞台のための稽古と、明日の本番に向けて一生懸命に準備を進めてきたのです。
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今私自身が能「葵上」の稽古をしているのでより切実にわかるのですが、練りに練って必死に稽古してきた能が本番直前になって突然「舞えなくなる」というのは、正しく断腸の思いだと想像します。
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あくまでも「延期」なので、代替日程が決まった時には万難を排してお手伝いに行かせてもらいたいと思っています。
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相手が自然災害とは言え、本当にやり切れない憤りを感じます。
しかし我々能楽師は、このような強烈な負の感情や経験すらも「舞台の糧」にすることができる人種なのです。
次の舞台に活かすことで、そういう負の気持ちが”成仏”してくれると私は思っています。
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今回の悔しさを力に変えて、彼が次の舞台で躍動してくれることを信じております。