時空を越える紋付と袴
世間ではお盆休みの真っ只中のようです。
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周りの人からちらほらと、海や山に行く予定、遊園地や野外フェスに行ってきた楽しい話などを聞いて「羨ましいなあ…」と思いながら、私自身は普段と全くかわり映えのしない生活を送っております。
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先週末の七葉会のエピソードを、思い出したものから書いてみたいと思います。
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今回澤風会の最年少出演者は小学5年生の男の子でした。
楽屋で紋付袴を着付けている時、袴を見て大変懐かしいと思いました。
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黒地に金色の格子模様が入った、子供用の袴です。
実はこれは私が小学3〜5年生の時に舞台ではいていた袴なのです。
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その後、今回の男の子のお兄さんが小学生の時に、暫くの間この袴を使ってくれていました。
お兄さんは今はもう東京芸大に入学して、宝生流の若手予備軍として修行を始めています。
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私がこの袴で、今回と同じ宝生能楽堂で仕舞を舞ってからもう40年が経ちます。
そして今年七葉会デビューを果たした弟くんが、またこの黒地金格子の袴で舞ってくれたわけです。
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これはしみじみ嬉しいことだなぁ…と思っていたら、高橋憲正さんの憲宝会の男の子がやはり仕舞で初舞台ということで、楽屋で着替え始めました。
憲正先生自ら、男の子に綺麗な空色の紋付を着付けながら、
「この紋付いいでしょ、僕が子供の時に来ていたものなんだよ」
と話されました。
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着付け終わった男の子の凛々しい姿は、憲正先生の子供の時の姿を想像させてくれました。
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私の黒地の袴も、この憲正さんの空色の紋付も、また時間と場所を飛び越えて、次の世代がいつかどこかの舞台で使っていくのでしょう。
一層しみじみと感慨深い気持ちになったのでした。