無人島に連れていくとしたら…
七葉会から一夜明けて、私は早朝の新幹線で静岡県の掛川に向かいました。
「初秋の千人の宴」という能楽公演に出演するためです。
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能は辰巳満次郎師による「黒塚 白頭」でした。
午前中のワークショップを終えて、私は若手能楽師と一緒に、久しぶりに「藁屋」の作り物を製作いたしました。
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竹の柱と台輪を、さらしを細く裂いた”包地(ぼうじ)”というもので巻いて固定していきます。
柱がグラグラしないように固定するのには、いくつかのコツがあって若手能楽師が最初に鍛えられる作業のひとつなのです。
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私が包地を巻いているのを、たまたま横で見ている人がいました。
私が「このやり方で、筏を組んだりすることも出来るのですよ。小屋を作ったり」
すると見ていた人が、
「ヘェ〜そうなんですね〜。じゃあ、無人島に誰か一人連れて行くとしたら、能楽師が良いかもしれませんね〜」
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成る程。確かに我々は包地を使って縄をなったりすることも出来ます。
能楽師は意外にアウトドアに向いた職業かも…
などと思いながら、柱を立てて壁と扉を取り付け、屋根を乗せて、安達ヶ原の鬼女の棲家である「藁屋」が完成しました。
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朝には七葉会の重たいような疲労感もありましたが、一日働いて帰りの新幹線で爆睡すると、東京に到着した頃には何だかスッキリした気分でした。
やはり疲労は動きながら徐々に回復させるのが一番だと思いました。
世間はお盆休みに入りましたが、私は今週も淡々と仕事をして参りたいと思います。