役の無い1日
今日は水道橋宝生能楽堂にて「五雲会」が開催されました。
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能「氷室」「藤」「来殿」
の3番が演じられたのですが、実は私はその3番の地謡にも後見にも、もちろんシテやツレにもついておりませんでした。
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前月の五雲会でシテを勤めた楽師は、翌月の五雲会で何も役がつかないことがあるようなのです。
五雲会で全く役が無いのは私にとっては初めての経験で、今日1日楽屋のどこに居れば良いのか、少々戸惑ってしまいました。。
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しかし考えてみると内弟子見習いの頃、楽屋入りしてからしばらくの間は、今日と同じような状況だったのでした。
五雲会の翌月以降の予定番組が貼り出されると、慌しい楽屋仕事の合間に何気ない風で見に行き、自分の名前がまだ何処にも無いことを確認しては、
「まあ気長にやっていればいつかは地謡にもつくさ…」
と気落ちしないように楽屋仕事に戻ったものです。
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あれから幾星霜。
最近は五雲会で役につけていただくのが当たり前に思えていた気がいたします。
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あの頃、初めて自分の名前を能「鵜飼」の地の末席に見つけた時の武者震いするような喜びと興奮。
今日ずっと楽屋で過ごして、その気持ちを思い出しました。
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来月の五雲会からは、再び役につけていただいております。
あの初めての能地の時の気概を忘れずに、また新たな気持ちで舞台に出させていただきたいと思います。