美也子さんのこと
辰巳孝先生の妹にあたられる辰巳美也子様が先日亡くなられ、今日大阪での告別式に参列して参りました。
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失礼ながら生前のように”美也子さん”と書かせていただきます。
美也子さんに初めてお会いしたのは、香里能楽堂で開催される「七宝会」の受付をお手伝いした時でした。
当時私は京大2回生だったと思います。
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世間の常識など殆ど何も知らない私に、受付業務だけでなくマナーなど色々なことを教えてくださいました。
優しくも厳しい、そして頭が切れてユーモアのセンスのある方だと思いました。
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時は少し流れて、私が能楽の道を志した頃のこと。
東京芸大を受験する前の1年間、私は辰巳孝先生の鞄持ちとして、色々な稽古場にご一緒させていただきました。
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午前中に香里園末広町の御宅に伺い、そこから辰巳孝先生のお供をして電車か車で関西各地の稽古場に向かいます。
そして夕方か夜に稽古が終わると、また末広町の御宅まで先生と一緒に帰りました。
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御宅では美也子さんが自慢の料理の腕をふるって、美味しい出汁巻きや海老フライなどの晩御飯を作って待っていてくださいました。
私もご相伴にあずかり、時には居間のコタツで芸大の楽典の勉強などをさせていただいてから京都に戻る、という日々を過ごしました。
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あの1年間、辰巳先生と美也子さんは私のことをまるで家族のように可愛がってくださいました。
もちろん時には美也子さんから「澤田さん!あなたこんな事も知らへんの!」と叱られることもありました。。
今では全て懐かしい思い出です。
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今頃は天上で辰巳孝先生と再会されているのでしょうか。
あのお2人のウィットに富んだ掛け合いがきっと繰り広げられていることでしょう。
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辰巳美也子様のご冥福を心よりお祈りいたします。