新たな能楽師の誕生

今日は水道橋宝生能楽堂にて「五雲会」が開催されました。

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能楽堂に到着すると、楽屋に熨斗紙のかかったお菓子の箱が出してあります。

“初舞台”や”楽屋入り”の時には楽屋にお菓子を出す慣例があります。

今日も誰かそのような人がいるのかな、と思って熨斗紙を見てみると…

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「初舞台 内藤瑞駿」

と書いてありました。

おお!内藤飛能さんの御長男瑞駿君が、もう初舞台なのですか!

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毎年夏の七葉会では楽屋に遊びに来て、ちょこちょこと走り回っていました。

それがもう4歳になって、いよいよ初舞台を迎えたのです。

今日最初の能「西王母」で、3000年に一度だけ実る”桃の実”を持って登場する、西王母の侍女の役でした。

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もちろん彼はまだ楽屋のことは何もわかりません。

装束を着けられるのもきっと苦しいことだと思われます。

お父さんの飛能さんが緊張感溢れる面持ちで、幕の直前まで付き添っていたのが印象的でした。

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しかし幕が上がってしまえば、もう誰も助けてくれません。

瑞駿君は毅然と前を向いて、一歩ずつゆっくりと橋掛りを歩んで行きました。

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楽屋で見ている楽師はなんだか皆が父親や母親の気分で、心配そうにモニターを見守っています。

子方が舞台の真ん中に無事到着すると、私も思わず「よしよし!」と頷いてしまいました。

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まだ本当に小さくて、後ろで座っている太鼓方よりも小さく見えるほどです。

その背格好では重く感じるだろう”桃の実”を、じっと動かずに持っています。

そしてやがてシテ西王母にその”桃の実”を渡すと、あとは笛座に最後まで行儀良く座っているのが仕事です。

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曲が無事に終わって、シテの後ろについて子方が橋掛りを帰っていきます。

幕が開くと、万雷の拍手が起こりました。

一人の能楽師が誕生した瞬間なのだと、私は感慨深くそれを見ておりました。

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帰って来た瑞駿君は、家元や三役に大きな声で「ありがとうございました!」ときちんと挨拶していて、今後が楽しみな良い子方だと思いました。

私もいつか彼の子方で舞えると嬉しいです。

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そして今日最後の能「船橋」のシテは、お父さんの内藤飛能さんでした。

私は地を謡いましたが、初番で子供の初舞台を終えての自分のシテはさぞかし大変だろうと思いました。

その「船橋」も先ほど無事に終わりました。

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内藤飛能さん本日はおめでとうございました!

瑞駿君の成長を私も楽しみにしております。

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