青山の琵琶ストラップ御守り

先日京大宝生会の2018年謡納めに参加した時のこと。

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謡納めが無事に終わると、今年も”申合”をしたという前部長プロデュースの美味しい鍋や、驚くことに前々部長が下宿のオーブンで自ら焼き上げたという七面鳥の丸焼きなどをいただきました。

そしてやがて卒業生へのプレゼント贈呈が始まりました。

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私の頃は謡納めではなく、冬の京宝連の後席で行われていたプレゼント贈呈式です。

今は各学年から「真面目なプレゼント」と「ネタ(受け狙い)のプレゼント」の2種類ずつが贈られるという、中々に品数が多い贈呈式でした。

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それらもひとしきり終わって、再び鍋と七面鳥に戻ろうかと思ったところで、現部長が僕の横に来て「実は…澤田先生にも贈り物がありまして…」

なんと、それは驚きです。卒業するわけでも誕生日でもなく、一体何のプレゼントでしょうか?

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部長「関西宝連の”経政”の前の日に、何人かで仁和寺にお参りに行きまして…。」

そして小さな袋を取り出しました。

部長「ついに手に入れたのです。」

おお、これはまさか!

袋から取り出してみると…

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やはり!

「青山の琵琶ストラップ御守り」!

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思えば9月初めの「経政合宿」の時に、仁和寺に参詣して境内を詳細に見て回り、この「青山ストラップ」も入手するはずだったのです。

しかし台風21号が接近していた為にその予定は叶いませんでした。

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それが遂に目の前に…!

よく見ると、ちゃんと第一〜第四の弦が張ってあります。

そして平家物語にある、

「夏山の峰の緑の木の間より、有明の月の出ずるを撥面に書かれたるゆえにこそ、青山とは付けられたれ」

という由来通りに、山から昇る月が撥面に描かれていました。

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台風襲来の前日に、京大宝生会の皆と登った双ヶ丘のことが思い出されました。

その日は台風の雲がかかり、月が昇るのは残念ながら見られませんでした。

ストラップが無事に手に入った今、次の目標はいつか双ヶ丘から昇る月を見ることでしょうか。

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そして謡納めでは、来年出す能の話もかなり具体的に相談されました。

来年もまた今年の「経政」と同様に、各人が色々な道程を経て本番の舞台を目指すことになるのでしょう。

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今年最後の太陽がつい先程沈んでいきました。

このブログもなんとかほぼ毎日書き続けて2018年を終えることが出来ます。

読んでくださった皆様、またこの1年でお世話になりました皆様、今年も誠にありがとうございました。

一番下にあったのは…

昨日書きましたように、今日の私の最大のミッションは「机の上を片付ける」ということでした。

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思えば1年前の年末は、翌3月に控えた「郁雲会40周年・東京澤風会第5回記念大会」の番組作りに大半の時間を費やしておりました。

なので机の上の整理整頓まで全く手が回らなかったのです。

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おそらく2年ぶりとなる本格的な机掃除です。

上にあるものから順々に「要るもの・要らないもの」に仕分けしていきました。

それはまた今年の時間を徐々に遡っていく作業でもありました。

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つい先日の関西宝連番組と経政の絵のチラシ→11月の京大能と狂言の会の番組とサブパンフ→10月の松本澤風会番組と乗鞍高原の地図→澤風会京都大会の番組と大山崎聴竹居のパンフレット…

と遡っていき、更に8月の岡山子供能楽教室と吉備津神社のパンフレット、松本城薪能のチラシや前座発表会番組及び松本市民タイムズの記事、3月の郁雲会澤風会の番組とパーティやお弁当など諸々の書類…

と続いていきました。

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そして机の上の山はまだまだ残っており、去年の関西宝連や京大能狂、松本澤風会、澤風会京都大会…とまた少しずつ遡って行って、遂に一番下にはなんと一昨年平成28年春の「澤風会10周年記念東京大会」の番組が埋もれていたのでした。。

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つまり今日1日で、ほぼ3年前までの自分の足跡を振り返ったことになります。

色々とても懐かしい番組や資料があり、この機会に整理して保存しておこうと思います。

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そして机の上が見違えるように綺麗になり、非常に良い気分です。

明日はいよいよ大晦日です。

たまった本の整理などをして、あとは静かに新年の訪れを待とうと思っております。

あとは掃除のみ…

今日は午前中に水道橋で来年に繋がる仕事の打ち合わせがあり、午後から江古田で芸大を受験する高校生の稽古を夕方までしました。

これで今年の仕事は全て無事に終えることが出来ました。

皆さま誠にありがとうございました。

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明日明後日でやらねばならないのが家の掃除です。

私にとっては如何なる厳しい稽古や舞台よりもある意味で難行苦行です。。

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しかし前にも書いたと思うのですが、私にはある秘策がありました。

ほろ酔いで帰宅した時に、酔い覚ましに掃除などの仕事をちょっとだけしてから寝るようにするのです。

すると翌朝目覚めた時に色々片付いていてびっくりする、という技です。

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ここ数日稽古納めと忘年会が続いたので、この技を何日か続けて繰り出しておきました。

なので先ほど確認すると、なんと掃除も実はあらかた完了していました。

あとは最大の難関である「机の上」さえ綺麗にすれば、さっぱりとした状態で新年を迎えることができます。

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明日は頑張って机の上の山と格闘したいと思います。。

江古田稽古場2018稽古納め

昨日は江古田稽古場での稽古納めが無事に終わりました。

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13年前に私が講師を担当した「ジパング倶楽部謡曲教室」から続く会員さんの多い江古田稽古場は、ベテラン揃いで年齢も私の両親と同じくらいの方々がいらっしゃいます。

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稽古納めの後の忘年会にて。

私の母親の挨拶の番になると、母は最近では口癖になっているらしく「この席ではおそらく私が最高齢になると思いますが…」

と話し始めました。ところが色んな方向から、

「いやいや私の方が上ですよ。もう90ですから!」

「私も再来年には米寿ですよ!」

などの突っ込みが入って笑ってしまいました。

ご高齢の皆さんも本当にお元気で、今年も稽古に舞台に励んでくださり、本当に有り難いことと感謝しております。

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またつい先日稽古を始められた方のご挨拶では、「昔気仙沼のマグロ漁船に乗っていたこともあります」と伺って驚きました。

また個性的な会員さんが増えて、今後がますます楽しみな江古田稽古場です。

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澤風会の2018年の稽古も昨日で全部終了しました。

年内の仕事は、来年芸大を受験する高校生の特訓が残っているだけです。

色々あった今年もいよいよ終わりが見えてまいりました。

一昨日の田町2018稽古納め

一昨日12月26日のブログが消えてしまったため、書き直してお送りいたします。

字体などがまだ不安定な恐れがありますが、明日以降改善して参ります。

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→今日は田町稽古場の2018年稽古納めと忘年会でした。

「この1年にあったこと」を思い出そうとすると意外に難しいものですが、皆さまに頑張って思い出していただきました。

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例えばある会員さんは、「河原で謡を稽古していたら、向こう岸のマンションの住人から”声が大きくて困る”と言われた」そうです。

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またこれまで何回も忘年会にゲスト参加していただいており、満を持して今年から稽古を始められた方などもいらっしゃいました。

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そして田町稽古場では能楽の他に御神楽をされている方などもいらして、願わくば来年はそういった能楽以外の発表の舞台を拝見したいと思います。

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さらに忘年会では9年前の謡曲仕舞教室発表会の写真も見せていただき、皆さま9年前と殆ど変わらないお姿で驚きました。

私は全体的に少々丸くなっておりました。。

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今年も色々あった田町稽古場でしたが、思えばこのホームページは田町の会員さんから勧められて始めたのです。

こうして丸2年ブログを続けられて、改めてこのホームページを開設出来て良かったと感謝いたします。

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田町の皆さま、来年もどうかよろしくお願いいたします。

ブログ体調不良…

昨日は田町稽古場の稽古納めのことをブログに書いたのですが、その前にホームページの複雑な更新をしたところブログの投稿が出来ない状態になってしまったようなのです。

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今も昨日書いたブログが行方不明で探しているところです。

正常なブログ更新まで今少しお待ちくださいませ。。

足の裏が見えるシーン

先日の五雲会での能「舎利」の数日前に、「舎利では見所に足の裏が見える可能性が高いので、新しい足袋を履きます」

という内容のブログを書きました。

今日はその後日談を。

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能「舎利」の冒頭、舎利殿を表す台が舞台の正先に出されて、更にその上に”三宝”に載せられた舎利珠が据え置かれます。

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そして前シテは中入の直前に舎利珠を取り上げた後、この”三宝”を睨みつけ、高く上げた右足で「グシャリ!」と三宝を踏み潰してから飛び去っていくのです。

舎利殿の天井を蹴破る様子をこの型で表現しているそうですが、初めて見るとちょっと驚くシーンです。

しかし能面を掛けているために、実は踏み潰す瞬間には”三宝”はシテからは見えていないので、綺麗に潰すのがとても難しくもあるのです。

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この”三宝”は、形は神社などでよく見る三宝そのものなのですが、全体が黒い布で覆われています。

この特殊な”三宝”は舎利が出る度に内弟子が手作りします。

私も何度も作ったのですが、真上から踏むと簡単に綺麗に潰れて、尚且つシテの足に刺さったり絡まったりしないように、素材や構造に工夫が凝らされているのです。

中々に手間のかかる作り物です。

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今回も楽屋で見ると、大変丁寧に作られた”三宝”でした。

これは心して踏み潰さないと。

そしていよいよ能「舎利」が始まり、話が進んで前シテが舞台の真ん中で「下に居」をするところまで来ました。

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「下に居」をすると、ちょうど正面に”舎利珠”が見えます。

そしてその先、見所の最前列のど真ん中になんと京大宝生会の若手OB2人が正に「かぶりつく」勢いで観ているのが見えたのです。

普段は脇正面に座っている2人です。これは私のブログを読んで、「足の裏が見えるシーン」を狙って正面最前列に座っているに違いありません。

これは益々失敗出来なくなりました。。

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いよいよ中入前。

私は台に飛び乗り、三宝の右横で「くるくる」と一回転してから素早くしゃがみ込んで”舎利珠”を取り上げました。

そして一度立ち上がり、三宝に向けて顔を切ってから右足を振り上げます。

するとそれを見上げる京大の2人が目を丸くしているのが一瞬だけ見えました。

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「グシャッ!」という手応え(足応え?)があった後、私はすぐに三宝から足を離し、飛び返って台から降りて幕へと走り込みました。

「果たして三宝は上手く潰れただろうか…?」

と気になって、中入してすぐに楽屋で見ていた楽師達に聞いてみると、

「ばっちり潰れてましたよ!」

との答えが返ってきて安心しました。

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そして後日、あの最前列で観てくれた2人に「どうだった?」

と聞いてみたところ、

「はい、足の裏が見えました!」

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…というわけで、”三宝”を丁寧に作ってくれた内弟子さんにも、ブログを読んで観てくれた人達にも面目が立ってホッとしたのでした。

76往復目

このところ連日「今年最後の…」という話題ですが、今日はまた「2018年最後の新幹線」に乗ったというお話です。

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試みに手帳を見て数えてみたのですが、今年は東海道新幹線(京都、大阪)と東北新幹線(青森、仙台)を合わせて76往復152本の新幹線に乗ったようです。

今は76往復目の帰りの新幹線に乗っている訳です。

改めて、私の日々の稽古や舞台は”新幹線”あってこそ可能なのだと感謝しております。

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思えば去年2017年は鉄道関係のトラブルに巻き込まれることが多かった気がします。

青森駅が全面停電で東京に戻れないとか、岡山駅でペットの犬がホームから線路に逃げて遅延とか…。

今年2018年は不思議にそんなトラブルが少ない年でした。

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今もクリスマスイブだからか新幹線はとても空いており、ゆったりと座って東京に戻れそうです。

次に乗るのは年が明けて少し経ってからになる予定です。

来年も今年と同じような移動の日々になりそうですが、願わくばトラブルの少ない1年になってほしいものです。

満月の稽古納め

今日は松本稽古場の2018年稽古納めでした。

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ブログを書くことで去年の自分の行動を思い出すことが出来ます。

実は去年も12月23日が松本稽古納めだったようなのです。

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そして去年の今日は「特急あずさ」新型車両のお披露目の日と重なってしまったらしく、新宿駅のホームや車内が混み合って大変だったことを思い出しました。

一方で今朝の新宿駅のホームは至って普通の光景で、車両も新型ではなく、車内はがら空きで静かなものでした。

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稽古では、狙った訳ではないのですがいらした会員さん達の仕舞・舞囃子・謡「三笑」が全て丁度最後まで一通り終わって、実にキリの良い稽古納めになりました。

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そして今日は2018年最後の”満月”の夜でもあるのです。

9月の満月の日に「クチーナにし村」さんの”満月ワインバー”で飲んだ一杯の赤ワインの物語をブログに書きました。

今年最後の松本稽古が”満月ワインバー”と重なるのも何かの御縁。

帰りにやはり一杯だけワインをいただきに「クチーナにし村」さんに立ち寄りました。

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座っていつものように「ワインはわからないので、お任せします…」と言うつもりでいると、その前に「今日は是非こちらをお飲みください。この前飲まれた赤ワインと同じ方が作られた白ワインです」

と言って一杯のワインを出していただいたのです。

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実は9月の時に「この方の白ワインもあります」というお話は聞いていながら、時間が無くていただけなかったのです。

今年の心残りだったのが、思いがけなく今日いただくことが出来ました。

今日は、「飲んで無くなってしまうのは惜しいけれど、それがワインなのです」というお話を思い出しながら、しみじみと一期一会の白ワインを味わいました。

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「クチーナにし村」さんをお暇して松本駅に急ぎました。帰りの特急あずさまであと数分。

しかし、もう一か所だけ寄りたいところがあったのです。

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「こんばんは!」

松本駅前の鰻屋さん「山勢」さん。

今年は松本城薪能で初舞台を踏んでいただき、また何度も美味しいお料理をいただきました。

一瞬だけご挨拶を…と思って寄ってみたのです。

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店内にはどうやら身内の方々とおぼしき団体さんがいらして、中に店主の奥様も。

そして奥様は小さな赤ちゃんを抱いておられます。

店主さん「いや〜実はつい先週生まれまして…」

なんと!それは今年最後にとてもおめでたいニュースです!

慌ただしくお祝いの言葉を交わして、「今年もありがとうございました!どうぞ良いお年を!」

とお店を出て出発間際に特急あずさに飛び乗ったのでした。

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そして今日も特急の窓の外には見事な満月。

今年は初の松本城薪能での前座発表会など、おかげさまで色々充実していた松本稽古場でした。

来年もまたより一層頑張って稽古させていただきます。

そして大きな夢である「松本に能楽堂を!」という目標に向けても進んで参りたいと思います。

松本の皆さまどうか来年もよろしくお願いいたします。

2018年最後の舞台

今日は奈良の新公会堂能舞台にて「崇宝会・松実会大会」に出演して参りました。

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今年の私の能舞台での仕事はこれで最後でした。

この1年、大阪や九州などいくつかの舞台でお会いした方々が、今日も元気に舞ったり謡ったりしておられました。中にはついこの間能のシテやツレを勤められた方も。

大きな舞台が終わっても、すぐにまた次の仕舞や謡に励んでおられるのを見て感心いたしました。

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崇宝会の皆さんは既に来年3月初めの東京での崇宝会大会を視野に入れておられて、また松実会の皆さんも早くも来年9月の松実会の番組の話などもされていました。

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そして、同志社、京女、南女宝生会などのOBOGさんも多く参加されていて、中には卒業以来ちょっと久しぶりに顔を見る人もいて嬉しくなりました。

たとえ仕舞までは舞わなくても、地謡だけでも気兼ねなく参加出来る舞台があるのは素晴らしいことだと思います。

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終了後の和やかなムードの宴会の楽しさについ腰が重くなり、危うく奈良からの最終の近鉄を逃すところでした。

私の年内の仕事自体は無論まだまだ終わりではなく、明日からまた頑張ろうと思います。

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崇宝会松実会の皆様、今日はとても良い舞台に参加させていただきまして誠にありがとうございました。