玉鬘神社にての演能
今日は奈良県桜井市の初瀬にこの度建立された「玉鬘神社」にて、創祀奉納能がありました。
番組は宝生和英家元による能「翁」と、辰巳満次郎師による半能「玉葛」で、私は2曲の地謡を勤めさせていただきました。
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玉鬘神社は、長谷寺から初瀬川を挟んで対岸にあたる山腹に建立されていました。
この地は昔、玉鬘ゆかりの「玉鬘庵」があった場所だそうです。
社殿の前に特設の舞台が敷設されており、周りは立ち見を含めて沢山のお客様で溢れていました。
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澤風会の会員さんも3人見に来てくださいました。その内のお1人は、つい先日の澤風会京都大会で舞囃子「玉葛」を舞われた方です。
自分で舞った曲を、その曲ゆかりの地で観能するというのは滅多に出来ないことで、大変素晴らしいことだと思います。
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時折雨がパラつく天気でしたが、修祓や玉串奉奠などに続いて先ずは家元の能「翁」演じられ、辺りは厳かな空気に包まれました。
続く半能「玉葛」も、全員が裃姿での「袴能」の形式で予定通り演じられました。
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地謡として舞台に出ているので、当然周りに眼をやることなどは出来ません。
玉鬘ゆかりの地で能「玉葛」を謡っているという実感もあまり無いままに舞台は進んでいきました。
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しかし、キリに差し掛かって「人を初瀬の山おろし」という文句を謡った瞬間に突然、「此処こそが”初瀬の山”なのだ」という感慨に打たれました。
山間の舞台で、お囃子の音も謡の声も初瀬の山に反響して実に良く通っています。
自分の謡が此処から初瀬川を渡って、対岸の長谷寺の方まで響いていけば良いと思いながら、残りのキリを精一杯の声で謡ったのでした。