能「張良」の極私的見どころ
明後日10月28日の日曜日には、水道橋宝生能楽堂にて「別会能」が開催されます。
私は能「張良」の地謡で、先ほどその申合がありました。
.
漢の高祖の臣下である”張良”が、”黄石公”という不思議な老人から兵法の奥義を授かる、というストーリー。
これは能「鞍馬天狗」にも出てくるお話です。しかし能「張良」は、大天狗が語る話とはかなり異なる展開になっています。
また、他の曲には見られない独特の演出がいくつかあり、とても面白い曲だと思います。
.
①シテは”黄石公”なのですが、むしろワキ張良の方が動きや謡が多く、曲の中心になっています。”ワキ”が主役のようになっているのは、ある意味で能楽らしいと言えます。
②前シテの老翁は、おそらくシテとして最も短い舞台滞在時間と思われるます。(厳密には”橋掛り滞在時間”ですが。。)
③後シテ黄石公が沓を川に落とす場面で、後見がとても重要な働きをします。この働きの結果次第で、ワキの動きが全く変わるのです。
④そのワキ張良が川に落ちた沓を拾い上げようとする動きが、非常に難しいものです。体操やフィギュアスケートの選手ばりの動きを、能装束を身に着けてやってしまうワキは本当にすごいと思います。
.
.
他にも能「定家」や、宝生和英家元による能「望月」など、稀曲・秘曲が揃った今回の「別会能」。
宝生能楽堂にて明後日10月28日正午始です。
皆様是非お越しくださいませ。