一杯のワインの物語
今日は松本稽古でした。
しかし、偶々お仕事や体調不良やご家族の付き添いなどが重なり、稽古にいらしたのは4人で、早めに終わってしまいました。
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稽古場を出て松本駅に向かう帰り道に、会員さんのイタリア料理店”クチーナにしむら”があります。
連休中の今日はもちろん営業されていました。
忙しそうだなと思って通り過ぎようとしたら、これも偶々お客様が入っていかれる所で、
「いらっしゃいませ!あ、先生も、いらっしゃいませ!!」
と私を見つけて声をかけていただきました。
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そこでついつい、「いえ、実は18時半の電車に乗るのですが…では、一杯だけいただきます。」
と席についてしまいました。
時間はまだ30分ほどあったのです。
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お任せで出していただいた一杯の赤ワイン。
ワインの知識の無い私は、「美味しい!」
という感想しか述べられないのです。。
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しかしそこで会員さんから、このワインに纏わる物語を聞かせていただきました。
このワインを作った方がつい最近若くして亡くなられたこと。
でもお嬢さんが跡を継いでいるということ。
会員さん御夫婦は、この方のワインに出会ってからお店のワインの方向性が定まったのだということ…
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そのお話を伺ってから飲むと、ワインの味が違って感じられました。
色々な歴史や人生が関わり合って、私の前にこの一杯のワインがあるのです。
何だかこのワインを飲んだら無くなってしまうのが勿体ないような気持ちになりました。
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その旨を会員さんに伝えたところ、
「それがワインですから。」
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成る程。
さっき素通りしていたら全く知らなかった筈のワインと、そこに内在する物語を、会員さんのおかげで体感することが出来ました。
あの一杯のワインとは一期一会ですが、”クチーナにしむら”さんにお邪魔すれば、また違うワインの物語と出会えるのでしょう。
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何か能楽にも通じる大切なことを教わった気がして、感謝してお店を出ました。
そして今、特急の窓からは中秋の名月が見えています。
今日も記憶に残る松本稽古になりました。