地謡が凄すぎて…
先週青森稽古に行った時のこと。
青森稽古場の方が、
「この前の舞台の仕舞、全然駄目でした…。横板に正座して自分の出番を待ってる時に、真後ろの先生方の地謡があんまり凄い迫力で、それを聴いていたら一気に緊張して頭が真っ白になってしまったのです。。」
という内容のことを仰いました。
その方は「国栖」の仕舞で、確か3人組パートの最後の出番だったのです。
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そして昨日、福岡の皓月会の後にご馳走になった”光寿司”のご主人も、カウンターの向こうでやはり「今朝仕舞を舞った時に横板に座っていたら、地謡の声がもの凄くて、すぐ前で聴いていて圧倒されてしまいました。」と仰ったのです。
最もご主人は2人組パートの最初の仕舞「俊成忠度キリ」を舞われたので、こちらは出番が終わってからの話です。
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奇しくも青森と福岡で同じ内容の言葉を聞いたわけですが、ともあれこれは中々難しい問題だと思いました。
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私は誰かの仕舞の地謡を謡う時には、当然出来る限りの力で一所懸命に謡います。
しかしその一所懸命な声のせいで、横板で出番を待っている方を緊張させてしまうとしたら、それはそれで不本意なことだと思うのです。
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だからと言って、修羅物などを弱い声で優しく謡う訳にもいきません。
「力はこもっていつつ、至近距離で聴いても緊張させないような謡」
というのが可能なのか、今後研究してみたいと思います。
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澤風会などのいわゆる”同門会”での仕舞の地謡というのは、上記のようなこと以外でも本当に色々と気をつかう、難しいものです。
様々に試行錯誤した結果、私は結局「シテが遅くても早くなっても、こちらは動ぜずに淡々と普通の速さで謡う」のが一番だと言う結論に今は至っております。
しかしこれもまだ通過点なので、今回の”凄すぎる地謡”問題なども考慮しながら、最善の地謡を目指していきたいと思っております。