永平寺の修行僧
京大宝生OB会全国大会では、2日目には観光をするのが慣わしです。
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私は例年は観光は失礼して帰るのですが、今年の福井大会ではある大事な目的があって、最初の永平寺だけどうしても行きたかったのです。
今朝福井駅前から、OBの皆さんと一緒に貸し切りバスに乗り込みました。
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実はこの春に卒業した京大宝生会新OBのTくんが、今まさに永平寺で修行をしているのです。
彼が卒業する頃は私がバタバタしていて、結局顔を合わせられずに彼は入山してしまいました。
何とか今日一目会って、ひとこと激励の言葉をかけたいと思ったのです。
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しかし厳格な修行で有名な永平寺です。
事前に我々が行く日程だけは伝わっていましたが、Tくんに会えるかは行ってみないとわからないという状況でした。
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OB会一行20数名が永平寺に到着すると、若い修行僧がひとりやって来ました。
「今日は私が皆さまをご案内させていただきます。よろしくお願いいたします。」
そして彼が広大な永平寺を案内してくれたのです。
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まるで迷宮のような廊下と階段とお堂を巡りながら、修行僧さんと少しずつ話をしました。
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すると、なんと彼は偶然にもこの春Tくんと全く同じ日に永平寺に入った、同期の修行僧だったのです。
度々メモ書きを見たりしながら、一生懸命に説明してくれる真面目な姿は、Tくんに重なるものがありました。
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面白かったのは、食事を作る部署がある「大庫院」での説明です。
「ご飯は意外に美味しいのです」とのことで、メニューをいくつか教えてくれたのですが、「カレー」「麻婆豆腐」などもあるそうなのです。
また「カシューナッツご飯というのが美味しくて、人気メニューです。」
精進料理といっても、私のイメージよりもかなりバリエーションに富んだもののようでした。
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折しも山門楼上の「羅漢堂」で御勤めが始まるようで、急角度な階段を沢山の修行僧が登っていきました。
あの中にTくんもいるようです。
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しかしOB会一行の永平寺における予定時間をすでに過ぎており、ついに彼に会えずに出発しないといけないか…と半ば諦めかけた時。
案内の修行僧さんが、「あと5分お待ちいただければ、Tさんを連れて参りますが」と言ってくれたのです。
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もちろん我々は5分待つことにしました。
そして…
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「皆さんいらしていただいて有り難うございます」と合掌しながら、僧衣のTくんがやって来てくれたのです。
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実はひと月ほど前に永平寺で彼に会ったという若手OBから、やつれてしんどそうな様子だったと聞いて心配していました。
しかし今回会った彼は意外に、というほど元気そうで、顔色も良くやつれた様子は全くありませんでした。
どうやら入山して3ヶ月経って、ようやく少し慣れてきたということのようでした。
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しかし私の内弟子生活も大概しんどいものでしたが、それと比べるのもおこがましい程の実に厳しい修行生活です。
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夜は10時頃就寝、朝は3時半起床だそうです。
布団は寝袋状に身体に巻いて、右半身を下にして寝る、ということまで決まっているとか。(御釈迦様の涅槃像と同じ格好です)
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Tくん「皆さん是非お手紙をくださいませ。お手紙を読むと、今日もまた頑張ろうと思えるのです。」
携帯などもちろん無い永平寺の修行生活では、「手紙」が唯一の下界と繋がる手段なのです。
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筆不精な私ですが、何とか彼に手紙を書いてみようと思いながら永平寺を後にしたのでした。