無声の稽古
一昨日の夜は京大宝生会稽古でしたが、ここで私は初めての試みをしてみました。
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「声を出さずに稽古する」
という試みです。
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地謡は元々現役達が謡ってくれます。
問題は舞囃子の「アシライ」でした。
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お囃子は、打音に「掛け声」が加わることで初めて成立するものです。
打音だけで適切な「謡い出し」や「舞い始め」のタイミングをわかってもらうにはどうすれば良いか。
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結局私が選んだ方法は「気合いを入れる」という、至ってバカバカしく思えるやり方でした。
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幸いに声以外は全く健康体なので、とにかく無声であっても「コイ合」や「カシラ」、「カケ切り」などの箇所では顔に力を入れて、心の中では気合いを入れて大きな掛け声をかけてみたのです。
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一応これには伏線がありました。
以前にある新作能の舞台の時、前シテの出が「無声のアシライ」というものだったのです。
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大小とも全く掛け声をかけずに、前シテが橋掛りを歩んでくるのですが、不思議なことにそれに合わせて大小の「ヨオ〜、ホオ〜」という掛け声が聴こえてくる気がしたのです。
ベテランのお囃子方の力とはすごいものだと感動いたしました。
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無論私のアシライでは、そんな風に聴こえる筈がありません。
しかしとにかく「気合い」を入れてやってみました。
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すると、現役部員のシテや地謡は私の「無声のアシライ」をちゃんと汲み取ってくれて、謡出しなどの場所を正確にわかってくれたのです。
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今後も喉の調子が悪くなることはきっとあるでしょう。
その時は、今回の方法で「無声の稽古」をやらせてもらうかもしれません。
その時は私の「気合い」に免じて、聴こえない「掛け声」を想像して聴いていただければ有り難く思います。