「謡」という乗り物

昨日の大山崎稽古では、試みにこれまで稽古した謡本を全部持って来てもらいました。

15曲ありました。

毎月一回、1時間ほどの団体稽古をコツコツと積み重ねて来た結果です。

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そして昨日はその15曲を、短い範囲で次々に謡っていくという「プチ・半歌仙会」のようなことをしてみたのです。

(半歌仙会とは、18曲を1日かけて謡う素謡会のことです)

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「竹生島」から始めて、「土蜘」「加茂」「船弁慶」「小鍛冶」「咸陽宮」「大江山」「鞍馬天狗」「安宅」…

と謡って、最後に「高砂」の千秋楽できっちり100分間謡い続けました。

15曲制覇はなりませんでしたが、「四半歌仙会」にはなりました。

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これだけまとめて謡うと、謡というものが如何に多彩で幅広く、奥深いかが良くわかります。

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何も知らないで聞いていると、謡は全部同じように聞こえてしまいます。

しかしきちんと稽古してから謡ってみると、一曲毎に時空間が全く異なる、目眩くような世界が広がっているのです。

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琵琶湖縦断の長閑な舟旅。

源頼光と怪僧の緊迫した闘い。

賀茂の神様の不思議な縁起。

嵐の海上で義経に襲いかかる平知盛の怨霊。

天下の名刀小狐丸の誕生秘話。

始皇帝を暗殺から救った琴の秘曲。

酒呑童子が大江山に住み着くまでの放浪の日々。(月にまで行って来たのです!)

春の鞍馬山中での大天狗と牛若丸の邂逅。

安宅の関での、富樫と弁慶の命懸けの攻防。

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「謡」とは、このような沢山の物語世界に自在に入り込んで行ける「乗り物」のようなものだとも言えます。

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大山崎では、来月から新しい曲「草紙洗」の稽古が始まります。

今度は美しい平安の宮中絵巻の世界へと、大山崎の皆さんと共に「謡」に乗って入って行きたいと思います。

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