満を持しての…

私は何事も計画的に実行するのが大の苦手です。

2年後に大きな目標を設定して、それに向けて課題をひとつづつ着実にクリアしていくというような経験は、これまでの人生で一度もないかもしれません。

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しかし、今日の涌宝会2日目で能「船弁慶」を舞われたシテの方が正にそのような2年間を過ごされたのです。

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2年前の涌宝会の時に、その方は仕舞「船弁慶キリ」を舞われました。

私もその地謡を謡った後に、その方が私に「実は再来年にこの船弁慶の能を舞おうと決心したのです」と仰られたのです。

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その後、舞囃子「船弁慶」を経験されて、今回の涌宝会で満を持して能「船弁慶」に挑戦されたわけです。

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そして果てしない稽古と綿密な準備を経てようやく迎えられた今日の本番です。

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おシテは緊張感を通り越した何か透明な雰囲気で能楽堂にいらっしゃいました。

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見所はやはり2年越しの船弁慶を観るために集まった方々で殆ど満席です。

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そのような舞台に立ち会うだけで、私も緊張してしまいます。

私は楽屋でのお手伝いだけでしたが、舞台の成功を心底から祈りつつ、出来る限りの仕事をさせていただきました。

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関係した全ての方々の力が重なり合って、今日の船弁慶は素晴らしい舞台になりました。

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3日間にわたった涌宝会の最後を飾る、2年前から作ってこられた能。

その舞台を終えられたシテの方は、しかしまだ何かが続いているような引き締まったお顔で楽屋で挨拶をされていました。

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おそらく今後何日もかけて、ここまで御苦労された様々と、今日の素晴らしい舞台を噛み締めていかれることでしょう。

このような大切な舞台に立ち会わせていただいて、大変光栄に思いました。

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