4件のコメント

「獅子口」の締め方

今日は宝生能楽堂にて五雲会が開催され、辰巳大二郎さんが能「石橋」の披きを無事に勤められました。

私もその地謡を勤めさせていただきました。

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「石橋」のシテは「獅子」ですが、この獅子は他の曲には無い極めて特殊な動きをします。

その動きのひとつが、「首を激しく振る」というものです。

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歌舞伎の獅子になると、紅白の頭を振り回す「毛振り」と呼ばれるより派手な動きになりますが、能ではその場で左右にブンブンと顔を切ります。

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また一方、能「石橋」のシテは「獅子口」というこの曲専用の面を掛けます。

この「獅子口」という面は、数ある能面の中でも最も大きく、最も重たい面なのです。

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そんな重い「獅子口」を掛けて激しく首を振ると、面がズレてしまいそうです。

そうならない秘密は、実は「面紐」にあるのです。

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能面の両目の横あたりには穴が開いています。

通常はこの左右の穴に面紐を一本ずつ通して、頭の後ろで結んで固定します。

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しかし能「石橋」においては、「獅子口」の左右の穴に面紐を2本ずつ通すのです。

そして頭の後ろで高さを変えて2箇所で固定する訳です。

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しかもその面紐を他の曲と比べて非常にキツく締め上げます。

後見が面紐を締めていくと、「ギチ…ギチ…」と紐が頭に食い込む音が聞こえます。

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こんなに締めて大丈夫なのかな、紐が切れたりしないのだろうか、いや寧ろ頭が破裂するのでは…と、楽屋に入ったばかりの頃は本気で心配したものです。

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そしてそのように2箇所で縛った後に、最初に締めた方の紐を一度解いて、再び更に強く締め直すという念の入れようなのです。

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そこまで締めると、「獅子口」は最早シテの頭と一体化したかのように完璧に固定されます。

そうなればシテは安心して、思う存分左右にブンブンと頭を振れるという訳なのです。

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今日のシテ辰巳大二郎さんも、溌剌とした動きで頭を振っていました。

若さ溢れる清々しい獅子でした。

大二郎さんおめでとうございました。

4件のコメント

  1. 「獅子口」はそんなに重たい面なのですね。そして面紐にそんな工夫やご苦労があるのですね。
    「石橋」に感動した後、遅い昼御飯食べてもまだ時間あったので、本郷給水所公苑で名残の薔薇と菖蒲とともにゆっくりして、新幹線まで時間を待って帰りました。

    1. なんと、コメントありがとうございます。実は私も終了後に、観に来てくれた京大生と本郷給水所公苑にぶらぶらと行きました。
      ほんの少しの時間差だったと思います。
      また京宝連でお会い出来ましたら、そのお話をしたいと思います。

      1. まだ蚊もおらず、日も長くて、一番よい季節でしたね。
        申し遅れましたが、昨日の俊成卿とても落ち着きと威厳があり、素敵でした。
        京宝連は仕事が当たっており、失礼致します。皆様のご活躍をお祈り致しております。

        1. 連日どうもありがとうございます。また何処かの舞台でご挨拶させていただきたいと思います。

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