匂いが”聞こえる”

今日は綾部で行われた「大本みろく能」に出演して参りました。

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一年前の今日5月3日のブログにも書いたのですが、半屋外の舞台は今回も大変心地よい風が吹いておりました。

最後の能「巻絹イロエ」のツレを勤めたのですが、舞台の冒頭に常座でツレの謡が始まる頃にちょうど雲が晴れて日が射して来ました。

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ツレは都から熊野へと巻絹を持って向かう道中を、「帝の命令とは荷が重くて、安らぐ暇もないなあ」と嘆いているように謡っていますが、実はその旅を楽しんでいる節もある気がします。

折しも天気が快復して、私の視界の端では爽やかな青空が覗いています。

私は自分が冬晴れの下で熊野灘を望みながら、また苔むした熊野古道を踏みしめながら、どこか浮き立つように歩く心持ちで道行を謡いました。

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熊野に到着したツレは先ず「音無天神」に詣でます。

そこで冬梅の匂いに気がつくのですが、その時の表現が「や、冬梅の匂いが聞こえるな。どこにあるのかな?」というものなのです。

「匂いが聞こえる」というのは実に繊細で優しい表現だと思います。

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音も無く咲いている梅が、「私はここに咲いていますよ…」と小声で囁くように香っているイメージが湧いてきます。

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道行の内容と言い、このツレはとても豊かな感受性を持っている人だと思われて、私の好きなツレの1人なのです。

このツレのような旅がしたいものだなあと思いながら、実際は今日もまた時速200キロの新幹線に乗っての、超高速の東京への道行なのでした。。

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