「雲林院」稽古中
来たる4月21日の七宝会でシテを勤めさせていただく能「雲林院」の稽古をしております。
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能「雲林院」のシテは在原業平ですが、他に能「小塩」も業平をシテにしており、また能「井筒」と能「杜若」でも、シテの女が業平の形見の衣を纏って序之舞を舞います。
私はこの何れの曲も舞った事が無く、業平を演じるのは全く初めてです。
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「杜若」や「井筒」では、「男性が女性を演じつつ、その女性が劇中で男装して舞う」という二重の性別転換が難しいと聞いたことがあります。
しかし考えようによっては、その複雑な構造が曲を理解する大きな手掛かりになるとも言えます。
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一方で「雲林院」は業平本人が現れて、二条の后との禁断の恋を感傷的に懐古する、というような内容。
なんと言いますか、ど真ん中ストレート的に高貴で優雅な美男子のお話です。
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舞は「序之舞」。これは女性が舞うことが多い、品位のあるゆったりとした舞です。
また、「作り物」は無し。
「持ち物」は前後とも「中啓(扇)」のみです。
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こうして色々書いてみても、やはり「取っ掛かり」が少ない曲に思えます。
業平のことを色々と勉強してもいるのですが、まだこの「雲林院」という曲に反映させられるようなイメージは出来上がっておりません。
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…という訳で、今は少々苦労している時期なのです。
しかしこれは毎度のことでもあります。ここから3週間かけて舞い込んでいく中で、少しずつ新しい気づきが増えて、イメージが膨らんでいくと思います。
また度々途中経過を報告させていただきたいと思います。
雲林院は主人公在原業平ですが、サシ・クセの「まづハ、弘徽殿の細殿に」以下は源氏物語から光源氏と朧月夜内侍との逢引との状況を借用している。従ってここは業平ではなく、源氏の気持ちで舞うなどと聞いたことがあります。宝生流シテ方の先生方にはそんな複雑な「傳」はあるのですか?
深遠なコメントありがとうございます。そもそも源氏物語と伊勢物語、また光源氏と業平の関係性などを詳細に考えだすと非常にややこしいので、その辺りの部分は敢えて曖昧に捉えるのが良いかと思っております。
曖昧な解答で申し訳ございません。