乱拍子の「空白時間」

今日は宝生能楽堂にて別会能の申合があり、私は能「道成寺」の地謡を勤めました。

昨年の「鐘後見」に続いて2年連続の道成寺です。

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道成寺の「乱拍子」は、シテと小鼓だけによって20分以上もかけて行われる「真剣勝負」のようなものだと思います。

今日の舞台で感じたのが、小鼓の流儀によって「乱拍子」の味わいが違うものだなあということでした。

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今回の道成寺の小鼓は「幸流」で、これは私が道成寺を勤めた時と同じ流儀です。

幸流の小鼓の場合、掛け声が非常に短いのが特徴です。

その短い一瞬に全ての気と力を注ぎ込むような、正に裂帛の気合いが込もった「ヨオッ!」という掛け声。そしてその後には完全なる静寂が訪れます。

10秒か15秒か、緊張と不安を覚えるような時間が流れて、なんの前触れもなく次の「ホオッ!」という裂帛の掛け声が。

そして再び長い静寂。

今日その静寂に身を置いて、私は自分の舞台の時の事を思い出しました。

あの時自分では、不思議なことに全く静寂には感じられず、舞台空間に何かがジリジリと音を立てて充満していき、それが飽和状態になった瞬間に「ヨオッ!」という掛け声が来るような感覚を覚えたのです。

幸流の乱拍子はその、何かが満ちて来るような何とも言えない空白時間が良いのだと今日改めて思いました。

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私の舞台の時には、見に来てくれたある京大若手OBが「緊張し過ぎて心臓が止まるかと思いました」と言っていましたが、観客にまでそれ程の緊張感を感じさせる「乱拍子」を始め、やはり道成寺は見所満載です。

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そして明後日の別会能本番は、他にも能「景清」、能「熊野膝行三段之舞」など大変豪華な番組なのです。

チケットは残り少ないと思われますが、皆さま宝生能楽堂にお問合せの上、別会能に是非お越しくださいませ。

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