「グー」と「パー」
私は澤風会などの仕舞稽古の時には、出来るだけ情報を素早く伝える為に、表現を簡略化する傾向があります。
手の型を言う時は大抵「グー」か「パー」です。
「扇を取り直す型は、まず左手パー、右手グーで両手を横に開いて…」などという感じです。
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とは言え、勿論能楽の型における「グー」と「パー」はじゃんけんのものとは異なり、正確にやろうとすると意外に難しいのです。
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「パー」に対応する「手の平を開く形」で大事なのは、
①全ての指を揃える。(特に親指だけ離れている事が多く注意)
②指は真っ直ぐに伸ばす。(水を掬うように指が曲がっている人がいます。特殊な型を除いて殆どの型で、指は伸びている方が良いです)
③開いた手でサシをする時は、手の平を上に向ける。(自然にサシをすると手の平は下向き加減になりますが、頑張って上に向けます)
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また「グー」に対応する「手を握る形」はより難しいのですが、
①小指だけは力を入れて握る。
②親指を真っ直ぐに伸ばす。
③人差し指、中指、薬指は、力を入れずに軽く握り、特に人差し指は、親指の先端が前に出ないように軽く握る。
④指の間に隙間が空かないようにする。
これだけの事なのですが、
・親指に力が入って曲がっている人。
・小指の力が抜けて隙間が出来ている人。
・中指と薬指にも力が入って、人差し指との間に隙間が空き、親指の腹が見えている人。
などがよく見られます。
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バレエの手先の型も、厳密に決まっているようです。
フィギュアスケートでも、指先の表現まで重視されています。
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能楽は表現がよりシンプルなだけに、「手の形」は余計に目につきやすく、重要なのだと思います。
仕舞を見ていても、「構え」と「手の形」が正確で綺麗な人は、「この人は出来る…!」と思ってしまうのです。