初めての一人旅
東北新幹線の車内誌トランヴェールに、沢木耕太郎さんの旅のエッセイが連載されています。
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沢木耕太郎さんと言えば、私は京大時代に「深夜特急」を文庫本で読みました。
アジアからヨーロッパまで、バスを使って一人旅する青年の長大な記録です。
初めて聞く名前の街で青年が体験する様々を、憧れの思いを持ちながら読んだものです。
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トランヴェールのエッセイには、その沢木さんが16歳の時に初めて一人旅をして東北を巡った時の話が度々出て来ます。
今月号のエッセイでは、その東北一人旅で様々な人に親切にしてもらったので、「旅における性善説の信奉者になった」とありました。
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沢木さんと自分を比べるのは大変おこがましいのですが、私も17歳の夏休みに初めて一人旅をしたのです。
岡山と、四国の香川を巡りました。
宿は「ユースホステル」で、晩御飯とその後には食堂に旅行者達が集まって、とりとめなく色んな話をしました。
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当時はそれ程多くなかった外国人旅行者も、安く泊まれるユースホステルをよく利用していたようで、食堂では片言の英語でそのような人達とも交流できました。
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元々の目的は、その年の秋に修学旅行で岡山に行く事になっており、私は修学旅行委員だったのでその個人的な下見をしたいと思ったのでした。
それが何故四国にまで渡ったのか、今となっては全く思い出せません。
高校生当時は「能楽」からもすっかり遠ざかっていた筈なのに、香川に渡った私は「屋島ユースホステル」に宿をとり、一人で屋島見物に行ったのです。
能「船弁慶」の子方で義経を演じた記憶から、義経への思い入れがあったのでしょうか。
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ともあれ、その「屋島ユースホステル」で私は何人かの日本人や外国人旅行者達とすぐに仲良くなり、生まれて初めて「ビアガーデン」という処に繰り出しました。(繰り返しですが当時17歳。何を飲んだかは、まあ内緒です。。)
彼らとは住所を交換して、東京に帰ってからもしばらくの間手紙のやり取りをしたり、交流が続きました。
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今の私は仕事で移動してばかりいますが、その移動も「旅」の一種だと思えば全く苦にならないのです。
それは思えば、私もあの17歳の時の初めての一人旅で、「旅における性善説の信奉者」となったおかげなのかもしれません。