桜色、ここに。
昨年4月11日のブログ「桜色はどこに?」で、「桜色の着物を着て桜川を舞いたい」という方がおられると書きました。
その方は松本稽古場の会員さんです。
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そして同じ松本稽古場の会員さんに「手織り紬」の職人さんがいらして、その方の手で「桜色の着物」の製作が着々と進んでいると聞いておりました。
その着物がついに完成して、今日松本稽古場で披露されたのです。
天然の染料で染めた糸を使って、一年近くをかけてゆっくりと丁寧に織られた桜色の着物。
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これがその着物の一部です。
遠目でみるとまさに桜色なのですが、近くに寄って見てみると微妙なグラデーションがかかっていて、更にその中にも異なる色が何色も使われています。
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濃い桜色は「茜」で染めた糸。
グラデーションで少し薄目の桃色になっているところが「桜」で染めた糸。
クリーム色に見える部分は”絹のダイヤモンド”とも称されるという「天蚕」の糸。
濃紫の筋のように入っているのが「紫根」を用いて染められた糸だそうです。
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「その時の気分に合わせて、色を変えていきました」とのこと。
いくつもの天然の色が重なり合い、全体としては実に鮮やかな、それでいて優しく品の良い桜色にまとまっているのです。
これは天然素材を使った手織りだからこそ出る風合いなのでしょう。
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更に、実際に着た時の感触が「すごく軽くて、まるで着ていないみたい」だそうなのです。
これも、手織りなので糸と糸の間に空気がうまく入り、織り上がりが軽くなるということでした。
機械織りではもっと重くなってしまうのです。
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この実に素晴らしい桜色の着物は、来月3月2日・3日に水道橋宝生能楽堂にて開催される、郁雲会澤風会での舞囃子「桜川」で皆様にお披露目されます。
ちなみに手織り紬の職人さんも、同じ日の仕舞「羽衣キリ」にて初舞台を踏まれるのです。
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一年かけて織られた桜色の着物と、それを着て舞いたいと願っていた方の「桜川」の舞と、その着物を作った方の初舞台「羽衣」の舞。
楽しみが重層的になって、まるで着物のグラデーションそのもののようなのです。