言語を超えた知的好奇心
一昨日の満次郎の会では、私は「プレミアムシート」の受付を担当しました。
プレミアムシートは、昼の部と夜の部の通し券に、お弁当とお土産が付いたものです。
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毎年この受付をしておりますが、今回は初めての経験がありました。
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プレミアム受付に、日本語が全く話せない白人の御夫婦がいらしたのです。
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恥ずかしながら「お弁当」と「お土産」も咄嗟に出て来ない私の英語力で、なんとか対応しましたが、お二人とも休憩時間にはお箸でお弁当を綺麗に召し上がっておられて、帰りもお土産をお渡しするととても喜ばれました。
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日本語が全く通じないということは当然「能楽」における古い日本語も全くわからない筈です。
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しかし御夫婦は昼の部から5時間近くに及んだ能楽堂での時間を、とても楽しく過ごしてくださったようです。
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また別の話で、昨日の亀岡稽古では、カリフォルニアからの留学生が稽古の見学に来てくれました。
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彼は「合気道」の研究をしているということで、日本語もある程度話せる人でした。
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しかし謡の稽古の時に、お弟子さんの横から謡本にずっと見入っているのには驚きました。
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彼はあくまで「合気道」の研究者で、たまたま謡の声が聞こえたので見学に来たということなので、当然宝生流の謡本を見るのも初めてです。
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私は内心申し訳ないと思いながらも通常と同じ稽古をしていたのですが、彼は「難しいです」と言いながらも飽きもせず熱心に謡本を見てくれていました。
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よく聞く話で、海外公演では謡の意味がわからない外国のお客様も、感覚で理解してくださるということは聞いておりました。
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しかし昨日一昨日にお会いした方々は、ツアーでもなく単身或いは御夫婦で、外国人向けではなくいわば「生のまま」の能楽を日本人と同様に味わい、そして楽しんでくださったのです。
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この「知的好奇心」は素晴らしいと思います。
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これからの時代は、このような「言語を超えた知的好奇心」を持つ海外の方々が、能楽に触れる機会が更に増えていくと思います。
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…しかしながら、せっかく楽しんでいただいた感想を、彼らと直接語り合ったり出来ないのは残念なことです。
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今更ですが、やはり共通言語としての英語力をなんとか身につけたいと思った週末でありました。