六甲学院における「復活のキリスト」

今日は神戸の六甲学院創立八十周年記念・能楽鑑賞会にて、新作能「復活のキリスト」の地謡に出演して参りました。

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「新作能」と申しましても、この「復活のキリスト」が初演されたのは55年前のことだそうです。

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世界平和を祈って作られた作品で、当時の第十七代宗家宝生九郎重英先生が節付け、演出、さらに自らシテを演じられたのです。

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本日伺ったお話では、当時この曲の為に作られた装束の一部は、ローマ法王、エリザベス女王、ルーズベルト大統領に献上されたということで、いかに大がかりな催しだったかがしのばれます。

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その「復活のキリスト」が、今年6月に日本バチカン修好七十五周年記念公演として、バチカン市国において新演出により演じられ、宝生和英宗家のシテによって正に「復活」したのです。

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そして今日は、そのバチカン版演出による日本国内初公演だった訳で、そのような貴重な機会に地謡に加えていただいて、大変光栄なことでした。

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キリストの装束は内弟子時代に通称「プラチナの狩衣」と呼ばれていたもので、白地に光り輝く十字架の文様がデザインされています。

50年以上前に作られた物とは思えない輝きを放っていました。

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またキリストの冠はこの曲専用の冠で、同じく内弟子時代に蔵掃除の時にだけ眼にしていたものでしたが、まさか実際に舞台上で見ることが出来るとは思いませんでした。

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六甲学院の講堂にはステンドグラスがあり、またオリーブの枝を飾った作り物が舞台に置かれて、まるで聖書の世界に能楽が入り込んだような、神聖で荘厳で、不思議に心地良い空間が現出しました。

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初演から55年が経過した現在でも、残念な事に世界中で多くの争いが起こり、沢山の人々が悲しく辛い思いをされています。

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「世界平和を祈る」ために作られたこの「復活のキリスト」は、現代においてこそもっと演じられるべき曲なのかもしれません。

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