実を結ぶ
今日も全宝連のお話です。
先日の全宝連では、舞台上の芸とはまた別の意味での感慨深い番組がいくつかありました。
神戸大学宝生会は、昨年復活するまで30数年間途絶えていました。
それを嘱託や師範クラスのベテランOBの方々が、ビラ配りから始めての手探りの新歓活動を数年間積み重ねて、ついに昨春に新入生2名が入部して復活したのです。
私はOBの皆さんの努力と情熱と、しかし最初はそれが全く報われないもどかしさも、間近で見ておりましたので、昨年の復活は胸に迫るものがありました。
そしてそれから一年。
神戸大学宝生会は、今年も新入生1名を加えて、3人で全宝連に登場しました。
舞台を観て正直びっくりしました。
力のこもった、レベルの高い舞と謡にです。
1人が舞うと、自動的に地謡は残り2人になりますが、入部したばかりの新入部員も実に大きな声で、懸命に謡っていました。
彼らは復活に関わった方々の思いを受け止めて、1年間密度の濃い稽古を重ねて来たのでしょう。
見所では神戸から監督にいらしたOBが、眼を大きく見開いて舞台を見守っておられます。
この大学は強い、と思いました。
復活しただけではない、神戸大学はこれから大きく発展していくでしょう。次の舞台が非常に楽しみです。
また愛知の南山大学は、たった1人の女の子が新しく立ち上げたクラブを、その後なかなか人が入らない中でやはりたった1人で守って来たクラブです。
その女の子がもう4年生になった今年。
ついに南山大学は新しい部員を迎えて全宝連にやって来たのです。
今回来られなかった部員もいて、総勢4人になったとのこと。
未来が見えずに1人で活動している頃には、時に寂しそうに見えたその女の子が、実に嬉しそうに新しい部員を紹介してくれて、やはりこれも万感胸に迫る思いでした。
他に東京でも、今回初めて名前を拝見した東京女子大学宝生会さんは、サークル未公認で活動に制約がある中、何とか部を存続させるよう頑張っているとのことでした。
先が見えない暗闇の中でも失われなかった情熱と、それがようやく実を結んだ時の喜びの爆発。
これらの思いの熱量が、今年の全宝連を熱い舞台にしてくれたのでしょう。
またこの先の全宝連が一層盛り上がっていくように、私も更に熱量を持って稽古に励んで参りたいと思います。