意外なところに…。
連休が終わって、世の中の皆様は今日からまたお仕事や学校が始まったことと思います。
私も、舞台が中心だった連休から稽古モードにシフトして、今日は松本稽古でした。
先月は甲府盆地の桃が綺麗でしたが、今日はどうでしょうか。
特急あずさで八王子を過ぎて山に入ると、今頃はやはり藤の花が目立ちます。
しかし同じ薄紫色の房状の花でも、藤とは逆に天に向かってスックと立ち上がって咲いている木が其処此処に見られました。
これは桐の花です。
桐は古代中国では鳳凰が巣を作る神聖な木だとされ、日本では平安時代に皇室が菊の紋に次いで格式ある紋として桐紋を使用しました。
その後も織田信長や豊臣秀吉など時の為政者が桐紋を重用した歴史があるようです。現在の日本国政府の紋章も桐なのです。
能装束にも「桐と鳳凰」のセットの模様のものがよく見られます。例えば「高砂」などの脇能物で後シテが着る狩衣に「紺地桐鳳凰模様狩衣」があり、他にも唐織や長絹でも見たことがあります。
このように紋様としては有名な桐ですが、現代においては「実物を見たことが無い」という人も多いかもしれません。
しかし実は皆さんは、おそらく毎日のように桐を見ているのです。
え、そんなはずは無い、と仰る方は、財布の中の500円硬貨を御覧ください。
表の図案が桐なのです。
葉っぱを緑に、その上部の房状の花を薄紫色にイメージすると、それがリアルな桐の木になります。
因みに水道橋の宝生能楽堂横の宝生坂にも桐の木があります。
今年はもう散りかけかもしれませんが、桜が終わって少しした頃に500円硬貨を手に宝生坂をのぞいてみてください。
天に向かって咲く桐の花を見つけることが出来ると思います。