初夏の風に吹かれて
現代においては能舞台は殆どが完全に室内に造られていますが、元々は屋外に面した造りでした。
室内にありながら能舞台に屋根があり、周りに白州があるのは、野外にあった頃の名残という意味でもあります。
その頃の白州の上には屋根は無く、刻々と角度を変える日光を反射して、舞台を効果的に照らす役目を果たしました。
能のいわゆる「五番立て」という分類は、太陽の動きに合わせた順番立てでもあるのです。
今日はその昔ながらの様式に沿って造られた、屋外に面した舞台での仕事でした。
朝一番に舞台に出ると、清冽な風が吹き抜けて、鳥の声を聴きながら謡を謡います。
陽が高く昇るにつれて、舞台は明るくなっていきます。小さな虫が飛んでいますが、風があるのですぐにどこかに行ってくれます。
午後に入ると、初夏らしく空気が暖まって来ました。舞台は少し気だるいようなふわりとした雰囲気に包まれます。
今日の天候が理想的だったというのもあるのですが、本当に外の空気を感じながらの舞台は素晴らしいと思いました。
仕舞や連吟などそれぞれの番組が、舞台を取り囲む外界の様々な変化で文字通り「自然に」味付けされて、何とも味わい深いものになっていました。
勿論、強い風雨や暑さ寒さには弱い点がありますが、屋外に面した能舞台での会がある時には、是非一度観に行かれることをお勧めいたします。
私の澤風会も、もしいつか機会があれば、今日のような舞台で発表会が出来たら良いなと思いました。