夢の無い話
今日は、とある町のホールでの演能です。
私は切り組みの立衆でした。
開演時間が近付き、鏡の間にあたるスペースで装束を着けることになりました。しかし…
私「すみません、楽屋に忘れ物をしました。。」
あろうことか、ひとつ下の階にある楽屋に胴帯を忘れてしまったのです。普段は決してしない凡ミスです。
「すぐ取って来ます!」一番近くにあった階段で急いで下に降りました。
ところが、楽屋がある筈のそこは駐車場でした。「来る時と違う階段を降りたからかな…」ちょっと焦りながらも、このフロアに楽屋があるのは確かなので、あちこち走りまわって探します。
しかしどうしても楽屋が見つからず、ついに開演時間が来てしまいます。
「どうしよう、舞台に穴をあけてしまう!」と狼狽えながら、胴着一枚の姿で走っている所で目が覚めました。。今朝の事です。
この手の能役者にとっての悪夢は、シテが間近に迫って来るとかなりの高確率で見てしまうのです。
例えば舞った事の無いシテを稽古無しでやる夢や、「猩々の前シテ」を勤める事になっている夢も見ました。
周りの先輩に型を聞いても何故か誰も教えてくれず、いよいよ追い詰められた所でハッと目覚めるパターンです。
内容が酷い分、目が覚めて夢だとわかった時の安堵感はとても大きく、「夢で良かった〜!現実では頑張ろ。」と思うのでした。
夢の無い夢のお話でした。