楽屋用語
先日ある舞台の楽屋で、内弟子が面白い失敗談をしていました。
彼は以前に楽屋で先輩から急に「へい!」と言われ、なぜ先輩は急に英語で挨拶を…とマゴマゴしていたらひどく怒られたそうです。
「へい」は「Hey」ではなく「弊」で、巫女さんなどが持つ御幣の事だったのですね。
楽屋で使う用語は、知らずに聞くと全然意味がわからないものが多いのです。例えば…
①ばす ②ばね ③もっとい ④へなちょこ
等々です。わかるものはありますか?答えは…
①公共交通機関ではありません。「馬巣」とも「馬巣鬘」とも言われる、馬の尻尾の毛で作られたカツラの事です。
②スプリングではありません。「大口(おおくち)」と言う大きな袴の様な装束を履く時に、背中に固定して大口を引っ掛けるのに使う木製の器具の事です。「腰ばね」とも呼ばれます。
③「元結」と書いて「もっとい」と発音します。鬘を束ねて結ぶのに使う、和紙をよって紐状にしたものです。「白もっとい」と「黒もっとい」があります。
④これは宝生流オリジナル用語です。装束の下に着ける、明るい緑色の襟の事なのです。先先代の家元が、男ツレの使うこの襟の事を「へなちょこ」と呼んでいらしたそうなのです。「今度のツレはへなちょこでもよろしいですかね?」「うん、へなちょこで大丈夫だよ」という様に使われます。
この様に、我々能役者は謡、仕舞、作法の他に難解な楽屋用語も覚えることが必要なのです。
また何か面白い楽屋用語を思いついたら書きたいと思います。