二枚の鏡板の話 その3
・鏡板移送作戦開始
渡辺三郎先生は93歳まで舞台に出られて、2013年7月に95歳で亡くなられました。能楽師としての天命を全うされた偉大な先生でした。
2015年7月に先生の三回忌追善の謡会が、懐かしい渡雲会舞台でありました。
そしてその謡会を最後に渡雲会舞台は閉める事にしましたと、お嬢様より報告がありました。
舞台と鏡板は何とか残せないか、と渡雲会会員の皆様も色々考えておられましたが、なかなか難しいようでした。私の家にも既に舞台も鏡板もあります…。
そこで私の頭に浮かんだのが、京大能楽部の新BOXでした。
新BOXはその頃ちょうど完成した所で、8月半ばに引越しすると聞いています。旧BOXには鏡板は無かったので、無論新BOXにも無い筈です。
ここに渡雲会舞台の鏡板を移設出来ないだろうか…。
しかし問題は山積みと思われました。
⚪︎鏡板の取り外しと移送の費用はいくらで、それを何処から捻出するか。
⚪︎鏡板のサイズは京大BOXに合うのか、また大学側や他の能楽部が鏡板の設置を許可してくれるのか。
⚪︎澤風会十周年大会を秋に控えて、果たして私自身が鏡板に関われる時間があるのか。
考える程にこれは無理な計画と思えて来ます。しかし8月末には舞台取り壊しという事で、ゆっくり考えている時間はありませんでした。
私の大好きなこの鏡板が生き残る為に、とにかく動いてみようと心に決め、京大のBOX引越しに合わせて先ずは壁の採寸に京都に向かいました。(続く)