地謡の目線
昨日の七宝会では能兼平シテのほかに、能小鍛冶の地謡をうたいました。
今日は水道橋宝生能楽堂にて立春能の能葵上の地謡に入りました。
私は地謡に座ると先ず、自分の視線をどこに落ち着かせるかを思案します。
能の地謡は前列後列の2列に並んで謡います。
後列の場合は簡単です。目の前にいる前列の紋付の背中にある紋をずっと見れば良いのです。
前列の場合、脇正面のお客様と正対するので、お客様と目が合わないように座席の角などに視線を合わせて、あとはそこから一切視線を動かさないようにしています。
たまにお弟子さんから「今日は澤田先生と目が合って困りました」と言われますが、私は絶対に見所の方とは視線を合わせないので、どうかご安心くださいませ。
そうは言っても、多少は眼を動かして、シテの様子などを確認したいと思う時もあります。
しかし数年前にある舞台の後で、当時面識の無い方に呼び止められて、「今日の地謡前列であなたが一番視線と姿勢を動かさずにいましたね」とお褒めの言葉をいただきました。
この後は一層強く、一度座って視線を決めたら終曲まで絶対動かさないと決めています。
しかし実はここに足の痺れという厄介な要素が加わって来るのです。。
目立たないように足を組み替えて痺れを克服しつつ、姿勢と目線を保つのは私の永遠の課題です。
この痺れとの付き合い方については、また別の機会に書かせていただきます。