龍神様に届いたから…?

昨日は竹生島能合宿を昼過ぎに終えて、京都から14時過ぎの新幹線で田町稽古に直行しました。

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京都駅で京大宝生会と別れた時、京都は凄い雷雨でした。

「皆は無事に家に帰れるだろうか…」

と心配しながら東京方面に向かいましたが、間も無く品川で新幹線を降りるという頃に急に外が暗くなって来ました。

稲光も光り始めています。

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どうやら東京も雷雨になりそうです。

本降りになる前に急いで稽古場に行こうと思い、やや慌てて山手線に乗り換えました。

そして乗ってすぐに、

「次は大崎…」

というアナウンスに打ちのめされました。

「逆方向に乗ってしまった。。」

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そして大崎から引き返す山手線に乗る頃から、大粒の雨が窓に当たり始めたのです。

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田町は「ゴロゴロ、ピカッ、ドカーン」というまるで漫画の擬音のような雷鳴が轟き渡って、滝のような雨です。

この夏初めてというくらいに、土砂降りの雨に降られてしまいました。。

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折り畳み傘で何とか稽古場に到着すると、すぐに自治医大の青年がやって来ました。

私「雨大丈夫だった?」

すると…

青年「ええ、もう止んでますよ」

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え?そんな馬鹿な…と思い外を見ると、確かにもう嘘のように雨は止んでいたのです。

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龍神は雨を呼ぶ、と聞いたことがあります。

京都と東京で遭遇した雷雨は、竹生島詣でをして能「竹生島」を奉納した京大宝生会の願いが龍神様に届いた証拠かもしれない…

と前向きに捉えて、田町稽古に突入していったのでした。

猪に囲まれての稽古…

今日は朝に台風明けの東京から何とか新幹線に乗り、京都紫明荘組稽古に向かいました。

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台風の影響で”酷暑”が戻ってしまった京都に到着して、向かった先は京都御所のすぐ横にある「護王神社」です。

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こちらの神社の和室を、紫明荘組稽古の場所として試しにお借りしてみることになったのです。

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猪で有名な護王神社は、「足腰の神様」でもあるそうで、能楽師としては大変に有り難い御利益です。

先ずは念入りに参拝いたしました。

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和室のある建物に入ると、大きな棚にびっしりと…

猪の置物が。きっと全国から奉納されたものなのでしょう。

こんな猪棚(?)がまだまだたくさん並んでいました。

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和室の中にも…

高級置物猪。

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掛軸猪。

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日本画猪と、猪さんの群れに囲まれての稽古でした。。

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かつて見たことのない大変インパクトのある神社で、猪の好きな方には全力でお薦めいたします。

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稽古環境としても良い所でしたので、また稽古にも使わせていただきたいと思いました。

自分でおさらいをする時間

今日は江古田稽古でした。

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最初にいらした方は、今度の澤風会京都大会で仕舞を舞ってくださいます。

「それでは仕舞稽古しましょうか」

と稽古を始めようとするとその方が、

「昨日の今日でおさらいが出来ていないのです…。」と仰いました。

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確かにその方は、昨日も稽古いらしていただいたのでした。

それならばと思い、

「では次の人の謡を先に稽古しますので、その間舞台を自由に使っておさらいなさってください」

と申し上げました。

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20分ほど謡の稽古をしてから、再び

「それでは仕舞稽古しましょう」

と言って稽古を始めると、おさらいの効果覿面で昨日よりも大変良くなっていました。

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やはり稽古場に来ていきなり稽古に入るよりも、ご自分でおさらいをする時間を少しとった方が良いようです。

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これは京大宝生会の稽古でも実践しています。

部員は授業が終わった人から順々にBOXにやって来ます。

なので、何人か新しい部員が来たところで、

「今から10分くらい、自由に舞台を使って稽古して」

と言って、私は一休みするようにしているのです。

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後から来た部員が摺り足から稽古を始めて、自分の仕舞を一通りおさらい出来た頃合を見計らって、

「ではそろそろ稽古再開します!」

と声をかけるのです。

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京大の場合、後から来た部員のおさらいの意味に加えて、稽古が終わった部員が注意された箇所を早速復習する時間にもなるのです。

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時間の都合で難しい時もあるのですが、私はこの「自分でおさらいをする時間」というのを大切にしたいと思っております。

合宿明けなのに…

今日は午後に江古田の個人稽古、その後田町稽古に移動しました。

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田町稽古場では、田町の会員さん達と並んで自治医科大学の青年が座って待っていました。

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彼とは一昨日の朝まで京大合宿で一緒にいたのです。

「合宿その後無事に終わったの?」

と聞いてみると…

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「はい!無事に終わりました」

謡い納めも滞りなく…?

「はい!14時頃まで謡っていました」

それはお疲れ様でした。

「その後BOXに戻って、稽古しました!」

え?

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確かに一昨日は月曜日で、夕方から宝生会の稽古日ではありました。しかし4泊5日謡い通し舞い通しの合宿明けです。。

ちょっと稽古して解散したのでしょうか?

「いえ、みんな普通に夜まで稽古していましたね。僕は夜行バスの時間があって20時頃にBOXを出ましたが、まだまだ稽古する感じでした」

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なんと。。

驚きを通り越してちょっと呆然としてしまいました。

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日曜日の晩は、全員の鸚鵡返しが終わったのが確か午前0時半頃でした。

それから打ち上げで、明け方まで起きていた部員もいるはずなのです。

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声も枯れ果て、膝は長時間の正座で限界に来ているに違いない彼らが、更に京大に戻って夜遅くまで稽古とは。

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20年以上稽古していても、京大宝生会のパワフルさには驚かされることばかりです。

このパワーを良い舞台に繋げられるように、私も彼らに負けずに全力でサポートしたいと改めて思いました。

第14回澤風会申合が終わりました

昨日は「松実会申合」でしたが、今日は香里能楽堂にて「第14回澤風会大会」の申合がありました。

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今回の澤風会では、舞囃子「高砂」と能「羽衣」が出るので、その2曲の申合でした。

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舞囃子「高砂」シテの会員さんは、去年宝生流教授嘱託になられて、澤風会で能「小袖曽我」の曽我五郎を勤めた方です。

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そして今回能「羽衣」シテを勤める会員さんは、この度教授嘱託の資格を取られることになりました。

10年ほど前に紫明荘で全くの初心から稽古を始めて、澤風会10周年大会では能「加茂」後シテ、去年の能「小袖曽我」でツレ母と、順調に経験を積んでこられました。

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紫明荘で稽古を始めた人が教授嘱託の資格を取る、というのは亡くなられた植田竜二先輩の望みでもありました。

今回ようやく植田さんにそのご報告ができることになり、大変嬉しく思います。

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先ほどの申合での能「羽衣」は、長く稽古を重ねた甲斐あって、ほぼ完成に近い段階に来ていました。

しかし修正点もいくつか見つかりました。

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本番までにはまだ何回も稽古があるので、更に稽古をして、

「紫明荘で稽古を積んだ人はしっかりしている」

と思ってもらえるように頑張りたいと思います。

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当日は植田先輩も能楽堂のどこかで、ニコニコして舞台を見守っておられることでしょう。

新生・日本女子大の初舞台

今日は久しぶりの江古田稽古でした。

稽古場に到着すると、母親がiPadで撮影した動画を見せてくれました。

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昨日の郁雲会稽古会「四季の会」で、日本女子大の新入生が、記念すべき初舞台・仕舞「羽衣キリ」を舞っている動画です。

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後ろに郁雲会のベテラン4人が並んで地を謡い、新入生は緊張気味ながらも正確に丁寧に舞っていました。

前半は完璧で、「これは天才的かも…」と思えるほどでした。

しかし終盤にちょっと早過ぎて戸惑うシーンがあり、それもまた京大宝生会などの新入生と似通っているようで、実に微笑ましく思いました。

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そして夕方になり、その日本女子大の新入生2人が稽古にやって来ました。

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初舞台を経て、気のせいか一回り成長したようで堂々と落ち着いて見えます。

仕舞は冬に向けて新しい曲を始めました。

「鶴亀」と「玉葛」です。

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既に母親の稽古で一通り習ったということで、早速一緒に舞ってみました。

「鶴亀」ではサシ回シヒラキ、六ツ拍子、大左右にユウケン。

「玉葛」の方は打合セやシヲリ、ヒラキカケなど、新しい型が沢山出て来ます。

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しかし2人とも「羽衣キリ」の時よりも格段にスムーズに舞えるようになっていました。

やはり一曲を終えると一段階成長するようです。

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続けて謡「鶴亀」も稽古しました。

こちらも既に母親から一通り鸚鵡返しを受けているそうで、私は細かな記号の説明をしながら半分だけ稽古しました。

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私「冬の関宝連では、2人でシテとワキを割り振って、素謡鶴亀を出したら良いよ」

新入生「はい、関宝連のエントリーシートが来ているので、書いて出しておきます」

最近では学生の舞台もネット上でエントリーするのですね。便利になりました。

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12月初めの関宝連は、今度は新生・日本女子大の初能楽堂出演になります。

エントリーシートを出すと、いよいよその舞台が視界に入ってくる気がします。

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関宝連の一員として恥ずかしくないように、舞台に向けてしっかり稽古して参りたいと思います。

お囃子方が増えました

昨日のブログで、澤風会及び京大宝生会には今お囃子を稽古している人が多いと書きました。

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試みに数えてみると、本当にたくさんの人がいたのです。

大鼓…7人。

小鼓…5人。

笛…6人。

太鼓…4人。

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なんと現在20人以上がお囃子を習っていることになります。

しかもその8割がこの3年ほどの間に新しく始めた人なのです。

お囃子ブームが来ているのでしょうか。

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流儀は中々バリエーションに富んでいます。

大鼓…石井流3人、観世流3人、大倉流1人。

小鼓…幸流4人、幸清流1人。

笛…森田流6人。

太鼓…金春流4人。

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また、つい先日驚くニュースがありました。

出来たばかりの「自治医科大学能楽部」において、葛野流大鼓の先生がなんと毎月大学までいらしてくださり、稽古をつけてくださることになったそうなのです。

つまり上の表に、大鼓葛野流が何人か加わることになります。

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これら澤風会関係者でお囃子を稽古している人達が、全員揃ってお囃子を披露する会をするというのも、ひとつの可能性としてあるかと思っております。

この人数ならば1日がかりの舞台になるでしょう。

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ただし、師匠である御囃子方能楽師を全員呼ぶと12〜3人になるので、ちょっと規模が大きくなり過ぎるかもしれません。。

将来的な夢として考えたいと思います。

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先ずは習い始めの皆さんは、どうか根気よく長く続けてくださいませ。

第14回澤風会京都大会に向けて

今日は来たる9月21日(土)に大江能楽堂にて開催の「第14回澤風会京都大会」に向けて、合宿形式の稽古を終日行いました。

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舞の稽古をする大部屋に加えて、謡稽古用の小部屋も3つ借りて、同時進行で色々な稽古をしました。

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今日の稽古のメインは能「羽衣」でした。

これを、大鼓、小鼓、太鼓、笛の4つのお囃子を実際に入れて、本番さながらの状態で稽古することにしていたのです。

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澤風会には、お囃子を習っている会員さんがたくさんいるのですが、今日は大倉流大鼓、幸清流小鼓、金春流太鼓、森田流笛という組み合わせになりました。

因みにそれぞれ習っている場所は、大鼓の方が神戸、小鼓が名古屋、太鼓が京都、笛が浜松と、見事に地域が分かれました。

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シテはこの度教授嘱託の免状を取られる、紫明荘組生え抜き(?)の方です。

稽古面をかけて、自作の衣を着て、作り物の”角台”も私が製作したものを正先に置きました。

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そして地謡は、今回女性5人が前列に並ぶことになり、今日はそのうちの3人が参加してくれました。

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このメンバーで合わせるのは今日が最初で最後です。

もちろんその状況でシテ、囃子、地謡が完璧に合うのは難しいのですが、能「羽衣」の生の空気感は見事に表現できて、大きな成果がありました。

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「羽衣」の他にも舞囃子「高砂」、仕舞、素謡、独調などを11時〜19時近くまでモリモリ稽古しました。

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人によっては、「仕舞、能の地謡、独調の地謡、小鼓」とか、「仕舞、素謡のシテ、笛」など1人何役もこなして大車輪で稽古してくれました。

日帰りですが、泊りがけの合宿に匹敵する内容の稽古が出来たと思います。

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本番まではまだ1ヶ月近くあります。

今日の成果を踏まえて、本番まで更に頑張って稽古して参りたいと思います。

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第14回澤風会京都大会

9月21日(土)午前11時始曲 於大江能楽堂。

能「羽衣」は午後12時40分頃からの予定です。

皆様是非ご来場くださいませ。

リアル「加茂」状態

今朝起きると、昨日の「約60人の初舞台」でパワーを使い過ぎたのか、若干身体が重い感じです。

3泊した宿をチェックアウトして、相変わらずのムシっとした京都の暑さの中を「ゲストハウス月と」に向かいました。

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今日は京都紫明荘組稽古だったのです。

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「ゲストハウス月と」に到着すると、中はエアコンがよく効いています。

そして亭主さんが出て来られて、「お盆過ぎてからの暑さは何故かとてもこたえますね…」

とややお疲れの様子でした。

昨日まで2日間にわたる大きなイベント「月と 寺子屋キャンプ」で、やはりパワーを相当使われたのだろうと想像しました。

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今夏は「月と」稽古ではまだエアコンを使わずにいたのですが、流石に今日は2階の稽古場のエアコンを入れて稽古いたしました。

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途中午後3時頃に、急に外が暗くなったかと思うと”ホロホロ…”と賀茂別雷神の足音がし始めました。

そしてあっという間に雨を起こして、”トドロトドロ!!”という、リアル「加茂」状態に。

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稲光が光った直後に”ドドオーン!”と大音響が鳴り渡りました。

どうやらすぐ近所に雷が落ちたようです。

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私は雷は平気なのですが、今日の雷は中々の迫力でした。

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夕方「月と」稽古を終えて京大宝生会に向かう時にも、まだ雨が残っていました。

あれだけ降っても気温は下がらず、むしろ湿度が上がって、熱帯の国を歩いているような息苦しい暑さです。。

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京大BOXに到着して、「さっきの豪雨は皆大丈夫だった?」

と聞くと、部長が「僕は甚大な被害を受けました…」

なんと、彼は濡れ鼠でBOXに辿り着いたらしく、シャツや靴下が干してあり、靴には丸めた紙が詰めてありました。

しかし元気に「箙」の仕舞を稽古していたので、風邪などの心配はなさそうでした。

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稽古途中で、中国に留学している筈の若手OBのK君が突然顔を見せてくれました。

2週間ほど京大での学習プログラムがあり京都に帰っていたようで、またすぐ中国に戻るということでした。

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彼は永平寺で修行中のOBのT君と同学年で、皆世界の中のそれぞれの場所で自分を磨いているのだなぁと、感慨深く思ったのでした。

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京大稽古も終えて外に出ると、ようやく雨は上がっていました。

「次に京都に来る時には、少しでも暑さがましになっていてほしいものだ…」

と思いながら、まだ蒸せるような湿気の中を、東京への帰路についたのでした。

今年初めての”秋”

今日は松本稽古でした。

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前回40℃の猛暑だった松本。

今回も台風一過で暑くなっていそうだな…

と覚悟して特急あずさを降りました。

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すると、意外なことに乾燥した風が吹いて快適な空気でした。

駅前の気温計を見ると…

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やはり前回よりも10℃ほども低くなっていました。

31℃でも、乾いてとても過ごしやすい気候です。

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今日の稽古場はいつもより遠い「城北公民館」でしたが、暑くないので歩いていくことにしました。

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久しぶりに松本城をじっくりと眺めつつ、お城の北の公民館へ。

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前回永平寺に行って来た話をしてくれたお母さんと男の子、そして日に焼けたサッカー少年などなど、今日も夜までみっちり稽古いたしました。

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そして20時前に公民館を出て驚きました。

とても涼しかったのです。

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辺りは秋の虫の声に包まれていて、ひと月ほど先に短いタイムスリップをしたような錯覚を覚えました。

今年初めて”秋”を感じた一瞬でした。

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思えば去年も、ちょうど今頃のブログに「今日初めて”秋”を感じた」という内容を書いた気がします。

季節が少しずつですが、確実に移ろっていることを実感できた今日の松本稽古でした。