カラオケボックスに行く目的は…

一昨日、若手OBOG合宿初日の稽古が終わった後の事。

OBのT君が、

「え〜と、私これからカラオケボックスに行くので…」

と言うのを聞いて「まだ歌い足りないのか…!」と驚きました。

しかしT君は、

「カラオケボックスで笛を吹きたいのです。1日に最低30分は笛を吹く事に決めているので」

なんと、笛の稽古でしたか。

しかし毎日欠かさず最低30分とは大変立派な事です。

するとOBのM君も、

「私もよくカラオケボックスで大鼓の稽古します。この間は部屋に入って”‼️‼️”と稽古を始めたら、店員が”大丈夫ですか⁈”と飛んで来ましたよハハハ」

…入室した途端に険しい顔で意味不明な絶叫を上げ始めるお客さんを見た店員さんは、さぞかし狼狽した事でしょう。。

その後、カラオケボックス稽古を終えたT君が晩御飯の会場にやや遅れてやって来ると、T君とM君でまたひとしきりカラオケボックス話で盛り上がっていました。

「稽古し放題30分290円で、ソフトクリーム食べ放題のカラオケボックスがあるんですよ!ソフトクリームだけで元が取れるという…」

「コートダジュールっていうカラオケボックスが良いんですけど、京都にあまり無いんですよね」

などなど…

仕事の合間にカラオケボックスで稽古をして、真面目な顔で1人でソフトクリームを食べている彼らを想像すると、何かとても微笑ましい姿に思えて笑ってしまいました。

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若手OBOG合宿が無事終了いたしました

京大宝生会若手OBOG合宿が無事終了いたしました。

舞囃子:八島、羽衣盤渉、邯鄲盤渉。

謡:実盛クセキリ、阿漕後半、敦盛能地、葵上。

あとは仕舞が歌占クセ、善知鳥、橋弁慶などおよそ20番ほど。

これらを2日間にわたってみっちりと稽古しました。

現役の合宿のように途中で散歩したりもせずに、只管稽古です。

OBOG達なので、仕舞や舞囃子の地謡もどんどん謡ってもらいました。

能舞台に近い環境で稽古できたので、非常に実り多き合宿になったと思います。

この成果は先ずは来週京大能楽部BOXにて開催される「仕舞100番舞う会」で披露されます。

今年の「100番舞う会」は、1回生達にとにかく沢山の仕舞を見てもらって、次に稽古したい仕舞を決めたり、将来習いたい曲をイメージしてもらったりするのが一番の目的です。

若手OBOG合宿で稽古した多くの曲が、1回生達の心に響く事を願って帰路につきたいと思います。

京大宝生会若手OBOG達の近況

今日は京大宝生会の若手OBOG達の近況を。

コロナ禍で色々な活動が制限されていた時期にも、若手OBOG達は弛まずに稽古を続けておりました。

その成果として、この数年で4人の30代若手OBが”教授嘱託”の資格を取りました。

現在彼ら4人は「七宝会」など関西宝生流の公演にも地謡として出演しております。

澤風会大会においても、京都大会で能「鶴亀」「小督」「蝉丸」「龍田」のシテとツレ、東京大会で能「夜討曽我」ツレなどを始め、実に多くの熱気溢れる謡や舞を披露してくれました。

そして今年も、3月9日(土)10日(日)に宝生能楽堂にて開催される「20周年記念澤風会東京大会郁雲会大会」において、

舞囃子「八島」を始め能「敦盛」地謡、素謡「昭君」、また仕舞10番ほどを若手OBOGが勤める予定です。

そして今年新たに教授嘱託取得を目指している人もおり、コロナ制限が無くなった今、彼らの活動はますます盛んになっていくと思われます。

実は今日明日とその京大宝生会若手OBOGの稽古合宿をいたします。

先ほど書いた澤風会郁雲会の舞台の他にも、今月末に予定されている「京大宝生会仕舞100番舞う会」に向けての仕舞稽古、また秋の「京都澤風会大会」に向けた舞囃子稽古など、みっちりと稽古したいと思います。

2024年全宝連京都大会の打ち合わせ

今日は大阪で七宝会申合がありました。

明日2月9日が七宝会の本番で、枚方市総合文化芸術センター小ホールにて17時開演。

能「春日龍神」シテ辰巳和磨

能「源氏供養」シテ辰巳孝弥

他狂言が演じられます。

その申合の後で、関西宝連の学生数名と楽師での打ち合わせがありました。

これは

「全国宝生流学生能楽連盟自演会(全宝連)」

の打ち合わせです。

来たる6月29日(土)30日(日)の2日間、京都金剛能楽堂にて

「2024年全宝連京都大会」

が開催されるのです。

宝生流を稽古している全国の学生達が年に一度集まって盛大に開催される「全宝連」。

コロナ禍で1年延期の年があったので、5年ぶりの京都大会になります。

番組作りの事、鑑賞能(30日に開催予定)のチラシやチケット制作、全宝連委員による謡蹟巡りの事などなど…

たくさんの内容を話し合いました。

なにしろ前回全宝連京都大会の時には皆まだ中高生であり、彼らは何も知らないところから委員をしないといけないのです。

我々楽師は出来るだけ委員の負担を軽くしつつ、楽しい全宝連にするためのお手伝いをして行けたらと思っております。

鑑賞能の詳細な番組など、また正式に決まり次第お知らせしてまいります。

繰り返しですが、

今年6月29日(土)30日(日)金剛能楽堂にて開催の「全宝連京都大会」

どうかよろしくお願いいたします。

京大宝生東京OB会新年会

今日は宝生会春日教室舞台にて、「京大宝生東京OB会新年会」に参加してまいりました。

毎年恒例だった新年会も、コロナ禍により2019年以来の久々の開催でした。

素謡4番と仕舞で、若手からベテランまで各世代のOBが思う存分に舞台を満喫した1日でした。

京大宝生会伝統の、

「役も地頭も地謡も、誰もが等しく全力で謡う」

というスタイルはコロナ以前と全く変わらず健在で、この数年でzoomなどのリモート稽古も積極的に行われていたようで皆様それぞれ腕を上げておられて驚きでした。

この6月には、こちらも数年ぶりの「京大宝生会OB会全国大会」が東京で開催される予定です。

今日の東京新年会の勢いで、全国大会もきっと盛大に謡って舞う1日になると思います。

今からとても楽しみです。

「荒い型」と「柔らかい型」

昨日は京大宝生会の稽古でした。

今はオフシーズンで、1回生はこの時期には全員揃って荒い仕舞「国栖」を稽古する事が多いです。

2回生での「嵐山」「鞍馬天狗」などのちょっと長目の荒い仕舞の前に、短い「国栖」は丁度良いステップになる仕舞なのです。

しかし今年の1回生は覚えが早いので、短い「国栖」だとあっという間に終わってしまいます。

そこで、国栖とは雰囲気の違う仕舞を並行して稽古する事にしました。

仕舞「羽衣キリ」「右近」「田村クセ」

の3番です。いずれも”柔らかい”仕舞です。

1回生6人はこれらのうちから好きな仕舞を一番選んで、「国栖」と並行して稽古する訳です。

1人ずつ順番に、まず「国栖」、そして続けて柔らかい仕舞を稽古します。

このやり方には、実は隠れたもう一つの意味がありました。

国栖に続けて例えば「右近」を稽古すると、”行き掛かり”や”廻り返し”などの型が見事に「荒い仕舞」のようになってしまうのです。

そこで私が「荒い時の”行き掛かり”はこうで、柔らかい時はこう」

と比較して見せてあげると、彼らはすぐにコツを飲み込んで2種類の型を舞い分けてくれました。

“荒い仕舞”と”柔らかい仕舞”は、数ヶ月単位の長い期間をかけて交互に稽古するのが通常の私のやり方です。

しかし今年の1回生達は本当に吸収が早いので、このオフシーズンのうちに2種類の演じ分けをしっかりと体得してもらおうと思っています。

2022年あけましておめでとうございます

皆様 2022年あけましておめでとうございます。

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昨年はコロナ禍が収まらない中でも3月に京都、10月に松本で澤風会を開催する事ができました。

学生の活動も全宝連は映像配信になりましたが、関宝連と関西宝連、そして京大の自演会は何とか有観客で開催されました。

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今年は先ず3月の5日(土)6日(日)に水道橋宝生能楽堂にて「東京澤風会・郁雲会大会」を開催いたします。

東京での澤風会は1年半ぶりで、能「井筒」、能「葵上」、能「夜討曽我」を始め舞囃子も多く出る予定です。

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そして9月24日(土)には京都大江能楽堂にて「澤風会京都大会」、10月には「松本澤風会大会」を開催予定です。

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私の演能予定としては、

①1月15日(土)五雲能にて能「巴」

於宝生能楽堂

②4月23日(土)七宝会にて能「羽衣盤渉」

於枚方市総合文化芸術センター

③5月27日夜能にて能「小鍛冶白頭」

於宝生能楽堂

の3番が予定されております。

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コロナの先行きはまだ不透明ですが、気をつけながら何とか頑張って稽古して参りたいと思います。

皆様本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

第12回関西宝連が開催されました

今日は京都大江能楽堂にて「関西宝連」が開催されました。

関西宝連としては12回目、前身の「京宝連」としては124回目になります。

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今回は幸いに有観客の舞台となり、たくさんの方々に観ていただくことが出来ました。

ちなみに昨年末の関西宝連は、京大宝生会は無観客となり、無人の見所に向けて舞うという可哀想なことになってしまったのです。

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それにしても今回で卒業する4回生達は、まさに波瀾万丈の4年間を過ごしました。

2回生の時に能「竹生島」を経験して、これからさらに高みを目指そうとしていた矢先にコロナ禍が始まりました。

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全宝連は結局それから2年連続で中止になり、彼らは金沢と東京には行けませんでした。

京大自演会「能と狂言の会」も昨年は中止、今年も小さい規模での開催でした。

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そんな逆境にもめげずに、彼らは稽古をひたすらに重ねていってくれたのです。

そして今日が現役最後の舞台。

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素謡「小督」は、シテ、小督、侍女、地頭を4回生で固めたもので、もちろん無本です。

普段よりやや離れて座っており、声を揃えるのが難しいかと思われましたが、役謡も地謡も良い位取りで声も揃っていました。

きちんと稽古をしてきたのがわかる謡でした。

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圧巻だったのが卒業仕舞です。

京大からは「杜若クセ」「八島」「三輪クセ」「殺生石」の4番が出ました。

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杜若クセや三輪クセは型もさることながら地謡が非常に難しい曲です。

しかも今回は切戸の密を避けるために大学毎に固めての番組でした。

つまり京大は4番連続で、舞ってすぐに謡って、という困難な状況だったのです。

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しかしこの4番は、4人それぞれが4年間かけて培ってきた個性が見事に開花した、素晴らしい舞台でした。

歴代の先輩達の舞台にも全く引けを取らない、非常に高いレベルの仕舞をみせてくれたのです。

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終了後の講評で山内崇生先生が、

「今日の君達は、自分で自分を誉めてあげてください」

と仰いました。

私も全く同感です。

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そしてその4回生の姿勢は確実に後輩達にも受け継がれています。

2、3回生の無本での素謡「土蜘」が、全員全力で声を出して、非常にパワフルで気持ち良い舞台だったのです。

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4回生がいなくなるとさびしくなりますが、今度は後輩達が更に下の世代へと、京大宝生会のバトンを繋げていってくれるに違いないと確信できた舞台でした。

学生の皆さん本当にお疲れ様でした。素晴らしい舞台をどうもありがとう。

声が大きくなった!

私が学生の稽古をしている時に、一番嬉しいと思うのは、実は学生の謡を聴いて

「声が大きくなった!」

と感じた瞬間なのです。

非常にシンプルなことですが、小さかった謡の声が大きくなっていくのを聴くたびに、しみじみと感動してしまいます。

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私は関東と関西で大学生を教えていますが、コロナがようやく落ち着いてきた秋以降には、以前のように月2回ペースで稽古ができるようになりました。

そして最近、東西それぞれの大学で「声が大きくなった!」と感動した瞬間があったのです。

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先ずは京大宝生会で、11月の自演会に向けた稽古をしている時でした。

今の現役には何人か、元々とても声の大きな学生がいました。

それに比べるとやや声量が少なかった学生が、仕舞のシテ謡で驚くほど大きな声を出してくれたのです。

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周りの大きな声に乗せられて、それまでの殻を突き破った感じでした。

今後さらに声量が増える事を期待しています。

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そして関東では、先週末にあった「関宝連自演会」に向けた稽古でのこと。

江古田稽古場で日本女子大学と國學院大学の学生が合同で素謡「小袖曽我」の稽古をしていました。

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今回の「小袖曽我」では途中でツレ母の長い語りがあり、その中で母が激昂して声が大きくなる箇所があります。

それまでの稽古でも母は大きな声を出せていたのですが、私はあえて

「一番怒っている時の謡の声量を標準にして、そこから更に大きくしていけると良いね」と言ってみたのです。

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すると母の謡が劇的に大きくなって、それにつられるようにシテ十郎とツレ五郎の謡も大きくなったのです。

私は「声が大きくなった!」×3乗の感動を味わうことができたのでした。

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しかし、まだまだ満足してはおりません。今回は本を見ながらの素謡でした。

次回来年6月の「全宝連東京大会」では、無本で、更に大きな声で謡ってもらおうと思っています。

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次回の全宝連は、東西の学生が無本で大きな声で謡を競い合う、熱い舞台になってほしいと願っております。

東西合同学生zoom稽古

昨日の日曜日は江古田稽古場にて終日リモート稽古でした。

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SkypeやLINEを使って、松本、京都、東京の澤風会会員さん達と1人ずつ謡の稽古をしていきます。

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日が暮れて最後のリモート稽古になりました。

zoomのリンク先にアクセスすると、それまでの個人稽古と違って何やら賑やかな雰囲気です。

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zoom会議室には、8人の大学生が集まってくれていました。

京大宝生会の2回生から大学院生、また日本女子大、國學院大の学生達です。

普段はこれに自治医科大も加えて、東西4大学が合同で「夜討曽我」の謡の稽古をしているのです。

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当初は8月に2回だけ、夏休み特別企画として東西合同zoom稽古をするつもりでした。

しかしやってみると意外にスムーズに稽古できて、それぞれの学校にとって良い刺激になっていると感じたのです。

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そこで9月に入っても東西合同稽古を継続して、昨日で4回目になりました。

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未だに大学ではオンライン授業が主で、友達と皆で賑やかに過ごす事もできない大学生達です。

せめてこのzoom稽古の中で、全国に同じ宝生流を稽古している仲間がいる事を実感してもらえたらと思います。

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そしてそう遠くない未来に、彼らが現実の舞台で思う存分に競演してほしいと願っているのです。