また台風が…

今日は名古屋能楽堂にて開催された、「和久荘太郎演能空間」の舞台に出演して参りました。

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能「天鼓 盤渉」を始め、家元の仕舞「熊坂」や満次郎師の独吟「西浜八景」など盛りだくさんの内容でした。

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生憎台風24号が近づいており、主催の和久さんはさぞかし神経をすり減らす思いをされたことと思います。

しかし、舞台は気合いの入った素晴らしいものでした。

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京大宝生会からも何人か観に来る予定と聞いていましたが、台風で来れないかも…と心配しておりました。

しかし流石というかやはりというか、全員が予定通り観に来ていました。

舞台終了時点で名古屋から出る電車が軒並み運休している中、彼らはどうやって帰るのでしょうか…。

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かく言う私も新幹線が運休で東京に帰るのが絶望的だったのですが、何とか車で名古屋を脱出しました。

途中強い横風が吹き付けてきましたが、何とか無事に21時過ぎに東京に到着いたしました。

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今年は本当に何度も何度も台風に苦しめられます。

今回の台風の被害が出来るだけ少ないことを祈るばかりです。

祈りたくなるような日

曇天模様の上野を出発した東北新幹線が栃木県辺りまで北上すると、前線の雲は南へ飛び去ってその先に秋空が広がっていました。

今日は2ヶ月ぶりの仙台稽古でした。

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新幹線で、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロのことを考えていました。

あの日私は内弟子として宝生能楽堂におり、楽屋食堂のテレビで恐ろしい映像を皆と見ておりました。

「もしかしたら、ここから世界は戦争に向かってしまうのだろうか…」

と重苦しい想像ばかりが浮かんできた記憶があります。

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あれから17年が経ちましたが、テロとそれに対する報復という復讐の連鎖は、止まること無く続いているようです。

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そして仙台稽古場にいらした方からは、「今日で震災からちょうど7年半経ったのです」

と伺って、ハッとしました。

あの日からもう7年半。

そしてやはり地震や台風は、その後も私達の平穏な日常を脅かし続けています。

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それでも、仙台の市場を覗いてみると、今年も秋の味覚が顔を揃えていました。

薩摩芋、栗、あけび…

そして柿などなど…。

自然の力は、ちゃんと私達に恵みも与えてくれているのですね。

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今日の東北の街は、涼しくて穏やかで、市場は活気にあふれて、こんな日がずっと続けば良いと祈りたくなるような風景でした。

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「祈ることしか出来ないけれど、祈ることは出来るから、祈ります」という言葉が、最近胸に染みました。

「平和を祈る」というのはとても月並みな表現ですが、今日9月11日は、世の中の平和を祈りたいと思います。

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下の写真は、今日ある方から頂戴した、大地の瑞々しさが凝縮されて型になったような”パプリカ”です。

そのまま食べられるそうなので、これから仙台の宿でこの大地の恵みをいただきたいと思います。

昨日の台風の被害

今日は予定していた稽古がキャンセルになり、ぽっかりと空いた1日になりました。

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なので、先延ばしにしてしまっていた京都澤風会の番組を作ろうと、”ゆいの森あらかわ”に向かいました。(家では作業出来ない人間なのです…)

外は台風一過の晴天でしたが、風はまだ時折強く吹いていて、テラスに出ると本を読むのにちょっと苦労するほどでした。(番組作りは…?)

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風に吹かれながら、今回の台風21号の恐ろしさを改めて思い返しました。

昨日の午前中のこと。

京大宝生会と私は、仁和寺駅から嵐電に乗って北野白梅町へ移動しました。

北野天満宮に素早く参詣後、まだ動いていた市バス203に乗り、烏丸今出川で私は京大宝生会と別れて下車。

それから速やかに地下鉄烏丸線で京都駅へ向かいました。

新幹線ホームに上がると、ちょうど11時5分発の”のぞみ”が定刻にやって来たところでした。

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乗り込んでホッとしたのも束の間、車内アナウンスが。

「米原地区強風の為、ただ今より運転を見合わせます」

なんと…これは暫く待って動かなければ、降りて京都市内で台風の通過を待つか…、と覚悟しました。

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幸いに間もなく「強風がおさまったので、発車いたします。」とアナウンスが流れて、のぞみは京都駅を出発しました。

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名古屋まではノンストップで到着し、風雨も少し落ち着いたように見えました。

しかし静岡県に入った辺りから再び嵐になり、窓外が雨の飛沫で全く見えない状態になりました。かつてこれ程の状態は見た覚えがありません。

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いつ止まるか、徐行運転になるか…とハラハラしながら、見えない車窓を見ていたのですが、不思議に新幹線は止まることなく新横浜に無事に到着しました。

そして更に品川駅に無事滑り込んだところで、私は「やれやれ、ここまで来れば安心」と、ホッとため息をつきました。

ところがまたその瞬間にアナウンスが。

「東海道新幹線はただ今より、上下線とも運転を見合わせます。再開には相当な時間がかかる見込みです。」

なんと…

しかし品川ならば在来線が通っています。他の乗客と共に下車して、山手線に乗り換えて無事に帰宅出来たのでした。

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そして帰宅後のニュースや様々な映像で、京阪神の惨状を知りました。

我々がつい午前中に参詣した北野天満宮や仁和寺が、倒木などで大変な被害を受けています。

また嵐山渡月橋や、下鴨神社も。

更にはつい先ほど新幹線に乗ったばかりの京都駅の天井が崩落して、怪我人が何人も出るという信じられないニュースも見ました。

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大阪や神戸は、高潮や猛烈な風で更に大きな打撃を受けていました。

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京都の知人達はとりあえず大丈夫そうですが、大阪神戸の方々が本当に心配です。

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今回の台風で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、また未だ続く停電や交通障害などの1日も早い復旧を併せてお祈りいたします。

また台風が…

今日は紫明荘組の稽古日でした。

7月初めには豪雨で一度稽古を中止しており、今月からは欠かさずにやりたいと思っていたのですが、また台風とぶつかってしまいました。。

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台風20号の接近は夕方以降という予報なので、何とかそれまでは少しでも稽古したいという内容のメールを会員さん達にお送りしました。

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稽古を開始した13時頃には、晴れ間の見えた状態から急に強く降り出すというような不安定な空模様でした。

しかし結局5人の会員さんが来てくださり、短時間で高密度の稽古をいたしました。

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15時半には解散して、私は少し待って16時に店仕舞いして稽古場を出ました。

幸いにまだ13時頃と変わらない天気で、傘を使わずに近鉄まで行けました。

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京都からの新幹線も全く平常運転で、暫くは台風らしさの感じられない車窓風景でした。

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しかし台風から遠く離れたはずの名古屋あたりから、俄かに強い雨が降り出しました。

非常に強い台風なので、離れた場所への影響も大きいようです。

やはり早めに移動開始しておいて良かったのだと思います。

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近畿や中国地方もこれから雨風共に強くなるはずです。

どうか皆様くれぐれもお気をつけてお過ごしください。

昨日一昨日とお世話になった岡山と広島の皆様が本当に気掛かりです。

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新幹線は外が見えづらい程の豪雨の中、浜名湖付近を通過中です。

花傘巡行の思い出

祇園祭の花傘巡行が猛暑のために中止になったというニュースを見ました。

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「花傘巡行」という単語を久しぶりに見て、非常に懐かしい気持ちになりました。

実は私は京大の頃に、花傘巡行のアルバイトをしたことがあります。

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京大狂言会の先輩から斡旋されて、初めて京都らしいお祭りに参加したのです。

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朝に八阪神社の社務所に集合して、巡行の装束に着替えます。

私は何か幟のような物を一本持たされて、行列に加わってぞろぞろ歩いた記憶があります。

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面白かったのは、女の子のアルバイトらしい人達が浴衣姿で巨大な団扇を持って、我々の行列をあおいでくれたことでした。

あれは寧ろ、あおぐ女の子の方が暑いのでは…とちょっと心配になりました。

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しかしその時の花傘巡行は、そこまで暑かった記憶もないのです。

なので、今年の猛暑はやはり尋常では無いということなのでしょう。

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しかし伝統に固執せずに、人々の体調優先で花傘巡行を中止するというのは、とても京都らしいしなやかな考え方だと思いました。

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来年もし復活したら、懐かしい花傘巡行を見にいきたいものです。

豪雨の後の亀岡浴衣会

今日は亀岡で「浴衣会」がありました。

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亀岡は先日の豪雨の時はJR山陰線も、また「老ノ坂」と呼ばれる山越えの幹線道路も寸断され、一時完全に京都市内との交通が不可能になりました。

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私も先週土曜日の稽古には山陰線が不通で行けず、今日はどうなっているか心配しながら東京を出ました。

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しかし京都から山陰線に乗って、嵯峨嵐山から保津峡を越えて亀岡盆地に入る間、豪雨の痕跡は全く見られずに、保津峡も少し水量が多いかな、くらいの流れでした。

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亀山城址にある稽古場も、大きな被害は無かったのとこと。少し安心いたしました。

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能楽には「祈り」の思いが込められています。

浴衣会の初めに主催者代表の方より、「今回被災された方々への祈りの気持ちを込めて、今日の浴衣会の舞台を勤めさせていただきます」とのご挨拶がありました。

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ニュースでは、今日になってからも広島で河川やため池が決壊しそうだと度々報道しています。

「祈る」しか出来ないのは何とも歯がゆいのですが、今はこれ以上被害が広がらないように、祈りたいと思います。

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亀岡の皆様は、先週土曜の稽古が出来なかったにもかかわらず、頑張って謡い、舞ってくださいました。

先週土曜の分の代替稽古日程も決まって、また私も新たな気持ちで頑張って稽古させていただきます。

亀岡の皆さま、本日はどうもありがとうございました。

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おまけですが、亀岡稽古場の「業平の杜若」に種子の入った莢が出来ておりました。

もう少し経つと、莢が茶色になって割れて、種子が見えてくるそうです。

種子から育てて花を咲かせるには3、4年かかると言うことですが…。

岡山と広島の被害

今朝も早朝に起きて、まず関西の大雨のニュースを見ました。

今朝から間引き運転をする予定だった嵯峨野線が、始発から運休になっています。

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やはり今日の亀岡稽古も延期にせざるを得ず、私は東京に2日間停滞しました。

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京都の河川の事を心配していたら、実は広島や岡山や愛媛で大変な被害が出ていたと知り、映像に衝撃を受けました。

二階の屋根に迫るほどの濁流が町を覆い尽くしています。

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あの町の中でまだ救助を待つ人々が多勢いらして、これから夜を徹して救助活動が行われるそうです。

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いつものように私は何も出来ずにただ祈るのみなのですが、一刻も早い救助と、そして救助活動をされている方々の無事を心からお祈りしております。

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そして実は、この8月に私は岡山県の小学生向けに仕舞教室を、また東広島の保育園で能楽ワークショップをする予定なのです。

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これから会うはずのまだ顔も知らない子供達と、その御家族のご無事もまた、心よりお祈り申し上げます。

身の安全を第一に

今朝三ノ輪の自宅で起きてニュースを見ると、やはり大雨のために関西の交通機関は大幅に乱れているようでした。

今回の稽古場所の丹波橋まで、たとえ無事にいらしていただいたとしても、帰りに電車が止まったら大変なことになります。

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早めに決断して、今日の紫明荘組稽古は延期にさせていただきました。

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それでも、夜の芦屋稽古には行けるかもしれません。

午後まで三ノ輪で様子を見て、東海道新幹線とJR京都線普通列車が動いているので何とか芦屋までは行けそうだと、東京駅までは行ってみました。

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しかし東海道新幹線は、動いてはいますが名古屋から新大阪までが150分遅れとの情報がありました。

それでは到着する頃には稽古時間が終わっています。

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やはり芦屋稽古も延期のお願いをして、すごすごと三ノ輪に帰って参りました。

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明日行く予定の亀岡も、今のところ嵯峨野線が不通になっています。

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稽古をお休みにするのは何とも心苦しいのですが、自然災害は本当に恐ろしいものです。

いざ遭遇してからでは、どうにも対処出来ないことが多いのです。

稽古される方々と、私自身の身の安全を第一に考えて行動したいと思っております。

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日曜までには天気も回復するという予報です。

昨日の繰り返しですが、関西の皆さまどうかくれぐれもお気をつけて、無理をなさらず過ごしてくださいませ。

関西の大雨

今日の朝早くに、三ノ輪の自宅で携帯のマナーモードが振動しました。

メールかと思い、「こんな明け方に何だろう…」と寝ぼけ眼で画面を見ると、「京都市左京区に大雨情報」という気象速報でした。

私の携帯には、京都市左京区の気象情報が流れてくる設定になっているのです。

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最近は夕方になるとよく同様の大雨情報があるのですが、「今日は朝からか…」と思い携帯を置いて、再び眠りに入りました。

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ところが、それからも1時間と置かずに繰り返し京都の大雨速報が入って来ます。

「これは余程すごい雨だな…」とちょっと心配に思いながら起きて江古田稽古に向かいました。

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江古田稽古の合間にも関西の気象情報が続々と入って来ます。

「大山崎町、茨木市、高槻市」など先日の地震で大変だった場所に今度は「土砂災害警戒情報」が。

「よりによって地震と同じ場所に大雨とは…」

とますます心配になりました。

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実は私は明日明後日と関西方面で稽古の予定なのです。

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しかし京都は鴨川、芦屋は芦屋川、亀岡は大堰川と、行く先々にある川がそれぞれ水量が大幅に増して危険な状況になっているようです。

JR嵯峨野線などいくつかの路線で終日運休という情報もありました。

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江古田稽古は先ほど無事に終わりましたが、今夜は気象情報をチェックしながら、明日の関西での稽古が可能かどうか様子を見たいと思います。

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関西の皆さま、どうかくれぐれもお気をつけて過ごしてくださいませ。

日本代表のメンタリティ

昨夜というか今朝早く、ワールドカップの日本対ベルギー戦を観ました。

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終わって呆然としつつ眠りにつき、午後からの稽古のために目覚めると、やはりニュースは日本代表のことで持ちきりでした。

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いくつか読んだ中で特に心を動かされたニュースが2つありました。

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ひとつ目は本田圭佑選手のインタビューです。

「このワールドカップが終わったら人生が終わると仮定してみた。その場合、自分はどんな覚悟をして、周囲とどんな会話をしていくかを考えて行動した。」というような内容でした。

ワールドカップという究極の大会で、更に人生がそこで終わってしまうという精神的極限状況に自分を置いてみる。

本田選手ならではの壮絶なメンタリティだと思います。

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ある舞台に臨む時に、そこで人生が終わると仮定して準備したことがあるかと自問してみました。

道成寺の時は、本当にその危険性はありましたが、逆に「怪我はしても死ぬことまではあるまい」と考えていた記憶があります。

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今後大事な舞台に臨む時には、この本田圭佑選手の言葉を思い出してみたいと思いました。

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ふたつめは、ロッカールームの話です。

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ベルギーに惜敗してワールドカップを去った日本代表。

そのロッカールームを掃除しに行った大会関係者が見たのは、すでに綺麗に掃除されたロッカールームと、「スパシーバ」と書かれたメモ、そして日本代表のチームカラーの青い折り鶴だったそうなのです。

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今朝のあの歴史に残る激闘を終えた日本代表が、非常な悔しさの中で、ロッカールームを掃除する人のことまで気遣って行動していたとは。

こちらも驚くべきメンタリティだと思います。

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あのような状況で「後から掃除する人のことを考える」というのは、「想像力」が余程豊かでないと出来ないことです。

そしてそういう「誰かのことを思い遣る想像力」とは、我々能楽の世界においても最も大切なことのひとつなのです。

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日本代表のワールドカップは今回は終わってしまいました。

しかし私を含めて多くの人々が、日本代表に大切なことを色々と教えてもらった気がしております。