秋の院展を見て参りました

今日の昼間に、上野の東京都美術館で開催中の「院展」を見に行って参りました。

田町稽古場の会員さんが毎回出展されていて、チケットをいただけるのです。

.

もうおそらく5回目くらいになる院展なので、大分様子がわかってきました。

好みの画風、というほどの審美眼は全く持ち合わせておりません。

しかし、「何となく良いな…」という絵の前に立ち、しばしボーッとその絵の世界に浸るのは大変心地よいものです。

.

.

今回は、「顔」を描いた作品で何点か印象的なものがありました。

ひとつは、お祭りの大きな御輿に群がる100人以上の人々を、上空から見下ろした構図の作品でした。

その1人ひとりを、非常に細かな表情や感情まで余さずに描いてあるのです。

ちょっと喧嘩になりかけている人や、気張った顔で御輿を担ぐ人、離れた場所で上を向いて大笑いしている人などなど…。

長く見ていても飽きない絵でした。

.

次は、鷹匠を描いた作品。

これは鷹を手に載せた鷹匠が一匹の猟犬を従えて草原に立っている構図です。

この”鷹”と”鷹匠”と”猟犬”が、全く同じ方向を強い視線で凝視しているのです。

その見つめる先は絵には描かれておりません。獲物がいるのでしょうか。

そして不思議なことなのですが、鷹と人間と犬という異なる生き物にもかかわらず、三者が同じ気配を纏っているのです。

このように感じさせられる絵は、おそらく初めて見た気がします。何故かしばらくの間、この絵の前から動けませんでした。

.

もうひとつの作品は、”鵺”を描いた絵でした。

私のこの夏の思い出にも残っている”鵺”。

しかしこの作品は実に奇妙な絵でした。

弓矢を構える武者のような存在が極彩色に描いてあるのはわかるのですが、よくよく見ても手足や身体の場所が非常に曖昧なのです。

特に”顔”が何処にあるのか、いくら見てもわかりません。

実に「鵺的」で、得体の知れない絵なのですが、これがまた不思議な引力を持っており、何度も絵から離れようとしては、「もう少し見たら顔が描いてあるのがわかるかも知れない…」と思って引き返してしまうのです。

ちょっと怖い絵だったのかもしれません。

.

.

そして田町の会員さんの絵は、やはり蔓草と曼珠沙華と向日葵を描いたシリーズのひとつでした。

しかし今回は、絵の一画に森と暗い空が描かれていました。

題名の”秋雷”の稲妻は描かれていないのですが、遠く「ゴロゴロ…」と響く雷の音が聞こえるようでした。

.

.

見てきた絵のことを文章にするというのは、なんだか自分の見た夢の話を人にするようで頼りない気持ちになります。

院展は東京都美術館にて9月17日まで開催されているので、可能な方は是非見に行っていただき、私の見た絵や、ご自身の好みの絵の世界に浸っていただくのが一番だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です