再び吉備津神社へ〜後編〜

吉備津神社の子供能楽教室では、比較的小さな子供と、年上の子供を2グループに分けて稽古しています。

前半の1時間が小さな子供チーム、後半1時間が年上チームの稽古時間です。

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先週の稽古の様子を聞いたところ、小さな子供チームは集中力の維持が中々難しく、特に謡(高砂の”四海波”)で相当苦労したようです。

そこで私は稽古形態を工夫することにしました。

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これは柏の幼稚園能楽教室で経験したことなのですが、「小さな子供は一瞬でも間延びした時間があるとすぐに集中力が切れる」のです。

これを打開するには、「同じことを長くするより、短い時間で区切って次々に違うことをする」のが経験上良い方法と思われました。

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今回の場合、集まった小さな子供チームに「最初は仕舞から始めます。」と言って仕舞「猩々」の稽古を始めました。

先週「猩々」の前半を稽古したと聞いていたので、後半に出てくる新しい型を先ずいくつか予習したのです。

そして5〜6分稽古したところで、あっさりと「はい、仕舞は一旦終了です!」

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間髪入れずに「はい座ってください!謡の稽古します。」

謡は、昨晩製作した秘密のテキストを持参していました。

これを使うと誰でも簡単に「四海波」が必ず謡える、という我ながら良い出来栄えのテキストです。

このテキストを手に、謡の稽古をこれも5〜6分。

そして「はい!謡も一旦ここまでです!立って仕舞の稽古しま〜す!」

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大人相手にこのやり方だと、立ったり座ったりですぐに疲れてしまうでしょう。

しかし子供の体力は無尽蔵です。

くるくると入れ替わる仕舞と謡の稽古に、何の抵抗も無くついてきてくれました。

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仕舞、謡、仕舞、謡…と4セットほど繰り返すと、仕舞「猩々」と謡「四海波」が一通り完成しました。

ここで年上チームが到着して、四海波テキストを手に合同で一度だけ稽古したら小さな子供チームは今日は解散。

再来週の本番までになんとかなりそうな見通しが立ちました。

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次に年上チームです。

こちらは先週の稽古情報で「恥ずかしがって中々謡の声が出ない」とのことでした。

これは普段稽古している澤風会でも経験していることで、大人になるほど大きな声を出す事に抵抗感を覚えるものです。

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こんな時に無理に大声を出させると、逆に抵抗感が強くなって、最悪謡が嫌いになってしまう恐れもあります。

ここは決して焦らずに、「まあ声は出せる範囲で良いよ」などと言って、精神的負荷を軽くするようにしました。

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そして仕舞「羽衣」の稽古では、巫女舞の経験者に「巫女舞ではどんな手の握り方をするの?」とか、「構えはどうするの?」などと逆に教えてもらったりしたのです。

実は今回私は、「巫女舞のやり方を仕舞の稽古に反映出来ないか」ということを考えていました。

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結果的には、彼女たちが巫女舞を舞ったのはもう何年も前の事で、詳細には覚えていないようでした。

目論見はちょっと外れてしまいましたが、仕舞「羽衣」に関しては、やはり同じ「舞」の経験があるだけあって非常にスムーズに進みました。

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稽古をスマホで撮影しても良いと言うと、2台のスマホを使って、友達の仕舞を前と横から同時に撮影し出したので驚きました。

どうやら何らかのアプリで画像をシェアするようです。

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仕舞の筋の良さを褒めつつ、やはり短い時間で謡と交互に稽古を進めると、徐々に謡の声も出てきた気がしました。

謡も最後に「四海波」を一通りスマホに録音してもらって、1時間の稽古を終えました。

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今回は本番での達成感と同時に、「謡も仕舞も稽古が楽しかった!良い経験になった!」と子供達に思って欲しいのです。

来週の稽古と再来週の本番、私の経験と知力体力を総動員して、何とか良い稽古と舞台にしたいと思います。

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帰りは大粒の雨が降ってきました。

蒸せるような湿気の中を、松並木を通って吉備津駅へ。

帰りの桃太郎線は普通の車両が来ました。

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画面右に写っている男性が変な人で、ホームの小さな待合室で大声で「君が代」を歌ったりしていました。

皆怖くて見て見ぬ振りをしていたのですが、何故か私に向かって「そこのあなた!安全靴、はいてますかぁ⁉️」と大声で聞いてきたのです。

「はあ…?」という顔をすると、「安全でない時に履くのが安全靴。わかりますかぁ⁉️」

とりあえず「はあ…。」というと、何やら満足したようで、親指をビシッと立てて車両に乗り込んでいきました。

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なんだか不思議な終わり方をした、今回の吉備津行きでした。

来週は一体どんなことが起こるのか、またブログでご報告したいと思います。

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