銀河のワールドカップ

普段ならまず読まないと思われる本でも、時期によって読んでみたくなる事があります。

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集英社文庫 川端裕人著「銀河のワールドカップ」もそんな本です。

少し前に古本屋で購入して、ワールドカップが始まったら読もうと思っていたのです。

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とは言っても、この本はワールドカップそのものの話ではなく、「小学生サッカー」を描いているのです。

「なんだ、子供の話か」と思われるでしょうが、決して侮ってはいけません。

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キャラの立った癖のある子供達が次々に登場します。

それぞれジダンやロナウジーニョ、マラドーナやクライフと言った名選手達になぞらえられていて、その試合描写には思わず日本代表の試合を見ているような熱さを感じてしまいます。

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そしてまた、この物語の主人公は「コーチ」なのです。

元Jリーガーで、過去の出来事で一度はサッカーから遠ざかったコーチが、子供達と共に再び自分の場所を取り戻していくのです。

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ある試合で、コーチ率いるチームは強敵と激突して苦しめられます。

しかしコーチは苦闘する子供達の姿を見て、「”本物の瞬間”というのがピッチ上にあるとしたら、それはこういう試合で顔を出す」のだと思います。

そしてその”本物の瞬間”の中にいる子供達に、嫉妬のような羨ましさを感じてしまうのです。

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このシーンを読んで、私はつい一昨日の全宝連を思いました。

学生達は、自分の曲や仲間の地謡、また全体の素謡を何ヶ月もかけて色々苦しみながら稽古して、ようやく完成させたものをたった一度の本番で完全燃焼させます。

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“本物の瞬間”というのが舞台上にあるとしたら、それは正に全宝連のような舞台で顔を出すのでしょう。

それを体感出来るのは、苦しい稽古を共有してきた現役部員のみです。

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私もその舞台を見て、「銀河のワールドカップ」のコーチのような”羨ましさ”を感じていたのだとわかりました。

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ワールドカップはまだまだ続き、私の読んでいる「銀河のワールドカップ」もまだ半分程が残っています。

今は松本稽古に向かう特急あずさでパラパラとめくって楽しんでいるところです。

日本代表の活躍と並行して続きを読んで、さらに熱くなりたいと思います。

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